なにこれこわい とん、と体が触れ合うだけで、胸が急に苦しくなった。並んで歩いているだけなのに、ドキドキグルグルなにこれこわい。 歩く速度を緩めて少し後ろを歩くと、すぐに気がついて同じように速度を緩めてくれる。 それからそっと手を取って、ふと優しく笑う貴方にノックアウト。私の心臓ばっかりバクバクしてて、どんどん寿命が縮んでいってるみたい。きっと貴方より早く死んでしまうに違いない。 今日のデート、楽しかった? 私の格好、おかしくなかった? また誘ってもいい? …次も手を繋いで欲しいな ぱくぱくと数回口を開いたり閉じたりするけど、何も言葉が出てこない。言いたいことたくさんあるのに、伝えたい言葉だらけなのに、ぱくぱく。 きょとん、と首をかしげる貴方。手をぎゅっと握って貴方を見詰めて、とにかく何でもいいから伝えようと言葉を絞り出すために必死にぱくぱくしてたら、スッと貴方の顔が近づいてきた。 ちゅ。 …ちゅ? 近づいてきたときと同じように離れていく貴方の顔。少し赤くて、でも何か楽しそうな顔で、してやったり、みたいな。 あれ、今、唇に触れたのっ、て。 「……〜〜〜!!」 いま、の、きす、だ!! どかん、って爆発したみたいに顔が真っ赤になったのがわかった。頭に血が上ったみたいにかっかっしてる。恥ずかしくて目が潤んできて逃げ出したくて手を離そうとしたら、逆に強く握って引っ張られた。 抱きすくめられる。ふわりと漂う貴方の香り。恥ずかしいことには変わりなかったけど、顔が隠れてるだけマシ、かも。 「…すき」 聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟く。途端にもっと強く抱き締められたので、しっかり聞こえていたみたい。温かい、貴方の腕の中。 体が触れてドキドキグルグル。 手を繋いでノックアウト。 キスで頭に血が上って。 抱き締められて、安心する。 …あれ、なんかおかしい? 貴方が好きで好きで仕方がなくて、私の頭の回線がめちゃくちゃ。あっちこっちで捻じれてショートしてるに違いない。 抱き締めたまま貴方が私に囁いた。甘い優しい声音で、耳からダイレクトに脳に伝わる。 ずるい。私が勇気を振り絞って伝えた言葉を、貴方はこんなにも心を込めて言えるんだもの。ざくざく!って矢が胸に刺さったみたいに、言葉が私の体中に襲い掛かる。 キューピッドの矢なんてメじゃない。 もう私には貴方以外見えなくなっちゃってるもの。 「す、き!」 負けじともう一度、もっと心を込めて伝える。どうだ、まいったか。…本当に私、意味わかんない。でも、貴方が笑ってくれたから。分かってるって、言ってくれたから。 それだけでもう今日は大満足。 でもきっと明日にはもっと沢山のことを望んでしまうだろう。愛して欲しい要求は止まらない。もうなにこれすごくこわい。 101021 sss |