Carnivore deer 2



ゆっくりと引き寄せられるように身を屈めて唇に吸い付く。
嵐くんの唇は想像していたより全然柔らかくて、ムニムニと感触を確かめるように何度も押し付けた。

「…、ん、…っ」
「………」

キスをしている間、嵐くんはビクッと身体を揺らした以外何も反応してくれなかった。
押し退けるとか、引き寄せるとか、何でもいいから反応して。
祈るように何度も何度も唇を合わせる。
しかし全く無反応で、だんだん泣きたくなってしまった。襲っておいて泣くとか、最低だ、私。
唇を離して少し身体を起こす。
真っ直ぐに私を見据える嵐くんの視線が痛くて恥ずかしくて、直ぐに俯いてしまった。

「…みなこ」
「…ごめんなさい」
「みなこ」
「すぐ、退くから」
「…みなこ」

強く名前を呼ばれる。
逸らしていた視線を恐る恐る向けると、真剣な顔している嵐くんと目があった。

「…っ」
「何で、こんなことしたんだ」
「ご、め…」
「泣くな。怒ってるワケじゃねえ」
「う、だって、」

泣くな。
泣くな泣くな泣くな。
ぎゅ、と眉間に力を込めて涙を堪える。深く息を吐いて心を落ち着かせてから、嵐くんに向き直った。

「嵐くんが、好きなの…」
「………は?」
「だ、だから、好き、です」
「誰が?」

だ、だ、誰って、私以外誰がいるの!
ふと嵐くんに告白していた女の子のことを思い出す。あのときの光景まで蘇ってきて胸が苦しくなったけど、あの子と嵐くんがどうなったかも分からないまま襲ってしまった自分が恐ろしくなった。
とにかく退こう。
足に力を入れて立ち上がろうとした途端、腕を引っ張られて嵐くんの胸に顔をぶつけてしまった。

「ぶ、あ、あらしく」
「おまえが俺を、好き?」
「う、うん」
「…本当か?ソレ」
「……うん」

あまり何度も聞かないで欲しい。
でもちゃんと伝えたかったのでしっかりと頷くと、突然ぎゅう、と両腕が私の身体を締め付ける。
顔が胸に押し付けられたままだから、息が出来なくて苦しかった。
いや、その前に私、もしかして抱き締められてるの?

「…すっげ、嬉しい」
「え…?」

今までの固かった嵐くんの声が急に明るくなる。
何が起きたのか分からなくて、解放して貰おうと彼の腕を叩いた。
とりあえず起き上がり改めて向き合う。なんだか恥ずかしくてまともに顔を見れないでいたら、ぐっと顔を持ち上げられた。

「俯くな」
「だ、だ、って、私、お、お…」
「お?」
「おそっちゃった、から」
「ああ、吃驚した」

だよね、そりゃそうだよね。

「でも、嬉しかった」

ぽん、と大きな手で頭を撫でられる。凄く優しくて暖かい、大きな手のひら。
今度こそ我慢が出来なくなって、ボロボロと涙が零れてしまった。
嵐くんの顔が近づく。
さっき散々口づけた唇で頬に流れる涙を掬われる。優しくて暖かくて、嬉しくて余計に涙が出てしまう。
一頻り涙を拭った後、額をくっ付けて嵐くんが真っ直ぐに瞳を覗き込んだ。

「俺も、お前が好きだ」
「……っ」
「…さっきの続き、していいか」

嵐くんに好きだって言ってもらえるなんて思ってなくて、きゅうと胸が締め付けられた。何だかわけが分からなくなってとにかく必死に頷く。
すると、嵐くんの唇が私の唇に重なった。

「ん、…ん?…ぁむうっ」

ぬるりと口の中に入り込んできたモノが私の歯をなぞり、更に奥に潜り込む。舌を絡め取られてぬるぬると擦り合わされる感触に、やっとそれが嵐くんの舌だということに気がついた。
思わず手を突っぱねるけど、耳の後ろ、首筋あたりがぞわぞわして全然力が入らない。息が苦しくなってきたけど、気持ち良くもなってきちゃって離れたくもない。もう、このまま窒息死してもいいかもしれない。
そう思っていたら、ゆっくりと嵐くんの唇が離れて行った。

「は、はぁ、はっ、」
「悪い、大丈夫か」
「ん、へーき…」
「…おまえ、さっきみたいに俺の上座れるか?」
「え?」

ぽん、と胡坐をかいていた嵐くんが自分の膝を叩く。
さっきみたいってもしかして胴体の上に馬乗りになっていたことを指すのだろうか。そう思った途端、顔に熱が集中して真っ赤になるのが分かった。
できない、と言いたいけど既にやった手前強く拒否もできない。ほら、と手を差しのべられて引くに引けなくなった私はさっきしたように足を開いて嵐くんの上に跨がった。

「…何で膝立なんだ」
「いや、流石に乗っかるのは…」
「大丈夫だ、ほら」

ぐっと腰を引っ張られて足の付け根辺りに腰を下ろす。なんだか内腿辺りがゾワゾワする。それと、なんか固いものが…。

「あ、ああああらしくん…!」
「ん、なんだ」
「なんだって、その、あのっ」

下を見れなくて必死に訴えようとしても、何て言っていいのか分からない。
パニックになっていると、その固いものがグリッと私の足の間に押し付けられた。

「あっ…や、」
「…マッサージ、してくれるんだろ」
「ん、でも、」
「おまえが襲ったせいでこうなったんだぞ」

よりいっそう強く押し付けられて、思わず腰が浮いてしまう。それをまた両手で押さえつけられて、さっきより嵐くんを強く感じた。
私のせいで、嵐くんがこうなったの?
そう言われると恥ずかしいけど、なんだか少し嬉しい。そっと嵐くんの首に抱きついてキスをすると、すぐに答えてくれた。

「ん、は、…!!」

キスに夢中になっていたらスルリとジャージの中に手が入ってきた。ショーツの上からお尻を撫でられてついつい反応してしまう。
相変わらず嵐くんの固いものは擦り付けられるし、ずっとキスしたままだし、頭が痺れて蕩けちゃいそう。
スルスルとズボンが脱がされてゆく。
こ、これはやっぱりそのまましちゃう感じだよね。その気にさせたのは私だけど、受け入れて貰えるとは思ってなかったし、突発的な行動だったので心の準備はできていない。
…告白前にしていった覚悟は、当然「振られる覚悟」なので今はなんの意味もない。

「で、でもなんか変な感じ…」
「なにがだ?」
「嵐くん、こういうこと興味無さそうだったから」
「あのな、一応俺だって男だぞ」

そうなんだけど、いつも柔道や食べ物の話ばっかだったしそもそも女の子自体に興味ないって言ってたし。
ディープキスとかそういうの、知らないんじゃないかなって勝手に思ってたんだけど…。

「…おまえだから、興味ある」
「え、…!」

聞き返すまもなく体操着をたくし上げられ、一緒にブラも押し上げられる。突然肌が外気に触れて、ふるりと身体が震えた。
露わになった胸が丁度嵐くんの顔の前にあって、まじまじと見つめられるのが恥ずかしくて居た堪れない。そんなにじっくり見ないで欲しい。
掬うように揉まれる。やわやわと手をマッサージしてくれていたみたいにされて、くすぐったくて身を捩った。

「あ、先立ってきた」

呟きながら先端を摘まれた途端、ひくん、とお腹の下の方が鳴いた気がした。
親指人差し指でぐりぐりと擦り上げられる。唇をかみ締めて声が出ないように我慢していたら、嵐くんが視線を上げた。

「…痛いのか?」

必死に首を振る。
なんだか変な気分というか、だんだん嵐くんの力加減も強くなってきてはいるけど痛くなくて凄くゾクゾクする。
私の様子を見て、何かを思いついたのか、一度手を離したと思ったら、今度はパクリと食いつかれた。

「んぁっ!」
「やっと声出たな」
「や、あっ、そんな吸っちゃ、っん」

それからはもう箍が外れたように喘ぎ、それにつられるように嵐くんの行動も大胆になっていく。
ズボンの前を緩めて硬く反り起ったものを取り出して、ショーツの上から擦りつけられる。ドクドクと脈を打っているそれは既に先走っていて、段々ショーツにしみを作っていった。

「も、入れたい」
「やっ、まだ、無理!」

いきなり入れるのは流石に怖いし、痛そう。
必死に拒否をすると、胸をいじっていた嵐くんの手がそろそろと下りてきて、ショーツの中に潜り込んでいった。直接敏感なところを触られて大きな声が出てしまう。探るように指先が動いた後、ぴったりと閉じた場所をこじ開けるように指が入り込んできた。

「ひ、いっ…いた、!!」
「…わり、優しくできる余裕ねえ…おまえも、」

痛みに耐えながら嵐くんの首にしがみ付いていたら、右手を取られて下の方へと導かれる。熱いものに触れた途端、手の中に握りこまされた。上下に扱く様に手を動かすように教えられたけど、ぬるぬると滑ってしまい思わず強く握ってしまった。

「…っつ」
「あっ、ご、ごめんなさい…ひ、あンッ」
「…仕返し」

身体の中に入ってくる指が二本に増やされて、ばらばらに暴れだす。体内をかき回されるような感覚に何も考えることができなくなってきた途端、ぬるりと指が引き抜かれた。




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