※特殊設定過多すぎ
パロです!!!!
世界観崩壊なので自己回避お願いします。

※ポリスマンと泥棒兼殺し専門さんの話。
殺人表現等あまりよろしくないものがでてきます。設定ぬるいご都合主義。
※迅悠一が病んでる。ヤンデレ。崩壊注意。












初めて人を殺したのはいつだったか。
生きるのに必死だったあの頃はもう覚えていない。ただあの皮膚を突き破り、肉を裂く感覚だけはいつまでも覚えてる。強烈な鉄の匂いと、最初はどくどくと流れていた真っ赤な血が、だんだんと浅黒くなっていく様子が、酷く目に映えた。


*


最近の街の様子はおかしい。次々と捕まっていく同業者と平和になっていく街。閑散として秩序もなかった通りが、一人歩きだって珍しくないほど平和に保たれ、金持ちが闊歩する。
一体どんな優秀な奴が来たのか分からないが、警察が今までありえなかった勢いで俺らを追い詰めていた。滅多に表にでないはずの武器屋や情報屋まで檻の中にいるのだから恐ろしい。お前も気を付けろよ、なんてお互い皮肉りあった次の日には、そんな展開も珍しくないのだから笑えない。特に俺の周りでは。まるでしらみ潰しだ。ああ、全くもって笑えない。

「っ……は、は……っ!」

息を噛み殺して、確かに感じるうしろからの気配にまた一つ壁を飛び越える。それでもその気配が消えることはない。おかしい。本当におかしい。人混みを利用しても、スラムの人間しか分からないであろう入りくんだ道を利用しても、まるで知ってるかのように追いかけてくる。犬でも連れてるのか、臭いか、それにしては身軽すぎる。カツカツと品の良い硬い靴の音は、確実に同業者、ではないだろう。このまま帰って我が家にご案内……なんてできるはずもなく、追いかけっこを初めてもう一時間は経つんじゃないだろうか。このままではただの体力勝負だ。俺はどちらかというと頭脳派なんだよ、くそが。

それなりに腕をあげてから、初めて一つの逃走ルートを潰すのは癪だが仕方がない。そうして飛び込んだ裏路地。無数にある廃墟の一つに地下室があるのは誰も知らないことで、そこの鍵を持ってるのも俺しかいないはずだった。

気配を殺して鍵を締めて、扉の向こう側に集中した。できるだけ距離を稼いで、建物に入るところも見られなかったはずだ。大丈夫。扉に額をあずけてずるずると座り込むと口元に笑みが浮かんだ。久々のスリルだった。悪くない。なんだかんだゾクゾクとした快感を感じていた俺も大概だ。それにしても、

「しつこかったな……」
「しつこいだなんて傷付くな」
「っ……?!」

誰もいないはずなのに声がして、反射的に腰の銃をとり背後に向ける……前に、棒のようなもので米神を殴られた。ちかちかと目の前に星が舞った。
勢いに地面に倒れ込むと体勢を整える前に組伏せられる。流れるような動作だった。顔を床に押し付けられ、背後でぎりぎりと締め上げられる腕が、下手な動きをすると骨折ると告げていた。

「っは、最近の警察も優秀になったもんだな」
「いやあ、実力派エリートなもので」
「…………お前なんなんだよ」
「、やっぱり覚えてないか」

聞かせるつもりではないだろう、小さな声で落とされた言葉が耳に入った。手加減されてはいるが、締め上げられる痛みに冷や汗を出しながら、笑って見せた。

「なんだよ、俺に親でも殺されたか」

がっと向きを反転させられ、天井を向かされる。抵抗できないように足の上に腰を落とされ、両手をそれぞれの足で押さえ付けられた。間接に食い込むそれは動かす隙を与えない。……こいつ、本当に綺麗な動きをする。動けば少しは付け入る隙ができるはずなのに、それがない。どうする。思考が止まらないように必死に回した。

初めて目があった奴の顔をまじまじと見る。悔しいことに綺麗な顔をしている。が、見覚えはない。よっぽどじゃなければいちいち殺した相手も、その関係者も覚えてない。精神がおかしくなるからだ。知っておいた方が良い情報はいつまでも忘れないが、覚えてないということは、まあそういうことだったのだろう。当時は圧倒的弱者だったはずなのに、大きくなったもんだ。

「殺しに来たのか、良かったな、間に合って」

明日もあるかないかの命だ。見下ろされる目は暗い室内に溶け込み、表情を読ませなかった。僅かに浮かぶ爛々と光っている瞳孔が俺に手を伸ばした。その手にはないもない。絞殺か、痛め付けるか。……後者だろうな。逆上させた方が生存率があがったり。そうしてくるであろう痛みを覚悟したが、その手はすっと俺の服をなぞると、まるで知ってるかのように隠しているナイフを探し当てた。一つや二つじゃない。ベルトのバックルに隠されたナイフ、細い針、ライターの仕込み。その他色々。姿勢の向きを変えられないせいで、後ろ手なのに器用に靴を脱がされる。全て取り上げられ遠くに投げられた。

「へえ、こんなのもあるのか」
「な……」

信じられなかった。どんな野生の勘を持ってるんだ。ひたりと黒い銃を額に押し付けられ、まだあるデショ?と笑いかけられた。

「ほら」
「……」

片方だけ足をあげられ、片手を解放されるが、額にある銃はいつでも発砲できるようになっていた。引き金にかかった指は少しの衝撃でも弾かれるだろう。そんな本気さがひしひしと伝わっていた。
腕を軽く振ると、袖口からナイフが落ちる。

「指輪は」
「……」

こいつ、本当に何でも見えてるかのようだ。怖すぎる。相変わらず片手を踏まれているせいで、口元で指輪を噛んで引き抜いた。吹いて飛ばす。目が慣れても見えない遠くの暗闇に、金属が跳ねる音が聞こえた。
解放された手もまた奴に足で押さえられ、ようやく額の銃を取り下げた男が、機嫌良さそうににっこり笑った。俺の頬を掌で包んだ。男に馬乗りにされる趣味はねぇ。親指だけを動かし、頬を撫でられる感覚は何がしたいのか全く分からなくさせる。

「本当の名前教えてくれない?」
「さあな、知らねぇよ」
「……君の口から聞きたいんだけど」
「知るかよ」

せめてもの抵抗で顔を背けて頬の手を外すが、追いかけてきた手に爪を立てられる。くそが。

「あんまり乱暴はしたくないんだけどな」
「はっ」
「せっかくこんなに綺麗なんだから」

その言葉の意味を脳が処理しきる前に、強く首を閉められ、酸素が絶たれた。前振りのないそれに喉が唸った。
時間が経つにつれ、はくはくと動く口は、空気を取り込むことはできないくせに涎をこぼす。結局絞殺かよ。
目の前に靄がかかって、あ、オチる、そう思って止まる寸前で解放された。はっ、一気に入ってきた酸素が、いっそ暴力的なほどに苦しい。必死で取り込む肺と心臓が痛い。脳が動かない。ぶわっと涙がこぼれてくらくらした。
涎と涙でぐちゃぐちゃになった顔を、先程まで首を閉めていたはずの手が優しくぬぐいとる。「名前、」なんなんだ。生かして何度も苦しめるつもりか。ありえなくはない、はずなのに。

それにしては──何かがおかしい。職業柄よく働く勘が警鐘を鳴らしていた。どうせ逃げられない。いっそ気付かない方が良い。そんな警鐘だ。おかしい。こいつは、おかしいんだ。

「あれ? しまった。読み間違えた。……強情だな、もう」

自分の荒い息がよく聞こえた。気付くな。
ようやく足をどかした奴を咄嗟に殴ろうとして、今度は両手で押さえつけられた。かと思うと、俺の首元に顔を埋め、奴は肩に思いっきり噛みついた。ひっ、思わず短い呼吸混じりの悲鳴を出すと、傷口を慰めるように舐められ、それは首筋を伝って耳元まで到達した。ぞわぞわした悪寒に耳まで犯される。気付くな。


「なまえ」


「ひっ、あ……、あ……っ、なん、なんで……!」

気付くな。……あ。
今度こそ本当の悲鳴だった。耳元で囁かれた名前が信じられなくて、思わず奴の顔を見た。初めて至近距離で見た奴の瞳。そして気づいてしまった。やっぱり気付かないほうが良かった。
怖い。こいつはおかしい。怖い。怖い。

何度も見たことある。精神がおかしくなったやつ。何かに執着してるやつ。それのためなら何でもできる、犠牲を伴わないやつ。死を怖がる奴より、死を覚悟した人間の方が厄介なように。普通の人間の常識じゃ計れない。奴の瞳はそれだった。

「ああ、なまえ……。やっと、やっとだ」
「やめ、やめろ……!触んな!離せ!!」
「ずっと欲しかった。ずっと"見てた"んだ」

するすると捲り上げられる服が恐ろしかった。お腹から胸にかけてじわじわと撫でられる恐怖で身体が震えた。「きれい、」いっそさっさと捕まえられて檻に入れられた方がマシだった。

「ちがう……やめろ……俺は身体は売らねぇ……!」
「"今は"、ね」

まるで未来が見えてるような口振りだった。最近仕事は減ってるだろうし、生きていくには手段選んでられないでしょう、なまえは。
俺の何を知ってるんだこいつは。俺の何を"見てた"んだ。完全に怒りが恐怖に負けていた。震えて声がでない。
また首に手が添えられ、今度こそ気絶させられると思った。殺されないだろう。殺された方が良い。

「なまえ、すきだよ。今度は俺が守るから」

奴の瞳は完全に俺に向いていた。





うばわれたもの





/
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -