京介はそれはそれは人気者なので、たとえ人の三倍忙しかろうが、その忙しさを知らない人に絡まれては時間を無駄にする。まあ、あいつはあいつでタフな奴だから軽くかわしているけれど。

「俺の京介に何か用だった?」
「あはは、ごめんってなまえくん」

手っ取り早く追い返すために、笑いながらこんなことを言うのが常だった。変に甘い雰囲気を出される前に、あえて空気を読まず、冗談でその場を流してしまう。そう、冗談だ。みんなも笑ってそれにのっかる。冗談でもなければ、こんなこと言えるわけがないのだから、分かってると思ってた。

なまえ先輩には烏丸先輩がいますもんね。

「なんだ知らなかったのか」
「嘘だろ?!?!」

しかし、なんと一部では俺と京介が付き合ってることになってるらしい。

「普通に考えて冗談だって分かるだろ?!むしろなんで皆受け入れてるんだよ!!」
「え、気付いてなかったの?分かっててやってるんだと思ってた」
「み、充くん……?」

お昼休みに机を突き合わせながら弁当を食べる。今日は後ろがとんがっている常幸がボーダーでいないので、俺と充と京介の三人だ。充が冷静に言った言葉に、挟んだウインナーが箸からポロリと落ちた。

「まさかの裏切り……」
「なにも裏切ってないよ」

横から箸が伸びてきて、弁当箱に無事着地したウインナーをつまんでいった。躊躇なく口に入れ、もぐもぐと咀嚼するもさもさ頭のイケメンを睨み付ける。

「お前もお前で何で教えてくれなかったんだよ……」
「別に困ることがあるわけじゃなかったしな。言いたい奴には言わせておけば良いだろ」

お前が良くても俺が困るんだよ……。
確かに京介にとっては良い人除けになってるかもしれない。そのうえであんなにモテてたら十分だ。でも俺は違う。ポケットにしまわれたままの白い封筒のことを思った。俺に春は来てくれるのだろうか。ため息とともにがっくりとうなだれた。

「…………」
「なんで受け入れてんだよ……」
「あれじゃないの、ほら、アイドルがコンサートでメンバーと仲良くしてたら盛り上がるでしょ」
「ああ、ごめん、全然分からない」


それが現実



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