高校生。
だんっ
成績優秀、運動神経抜群、イケメン、金持ち、こんな奴いねぇと、思うだろ?居るんだわ俺のクラスに、俺の目の前によ。
机の上にジャンプして乗って、突っ立ってんの。何で?知らねぇよ、だって俺初めて二人きりになったし、クラスではあまり喋らないで本読んでるし、根暗だし、いつも話の中心にいる俺にとっては、関われない奴。
ざばっ
「!?」
「何を、見ている」
「っ、お前!これ水じゃねぇか、くっそぉ…」
そいつは近くにあったバケツの水を俺に向けてかけてきた。誰だよ掃除当番、バケツしまえよ、え、てことはこれ雑巾しぼった水ですか、この鬼畜野郎、なんてことを
「びしょびしょ」
「だろうな、なぁアンタ何したいわけ、なんでこんなことすんの」
「…怒らないのか?」
「怒る前に理由!」
そう言うと鬼畜野郎は自分のブレザーを脱ぎ、俺に被せて来た。拭いてるつもりなんだ、多分。
「悪かった…」
(理由は無視ですか)
「はぁ…たく、なに、何で立ってたの涼野」
「すずの、辞めてくれ、風介だ」
「…ふうすけサン、何してたんですか」
「解らない、のぼりたかったから…」
「お前は幼稚園児か」
濡れたワイシャツを脱いで、風介が貸してくれたブレザーを着る。肌寒い、だが濡れたままよりマシ。
「最近多いんだ、理性が失われて判断力にかける」
「お前、今日の小テスト満点じゃなかったのかよ」
「テストは別」
あ、そう。
大財閥の坊ちゃまは何を考えているのか解らない。というか、初めてこんなに話した、風介と。新鮮だ……、なんだろうか、先程から風介にガン見されている気がする。
「柔らかそうだ」
「何が」
「晴矢の、コレ」
いきなり呼び捨てですか。コレ?コレって何――
「んっ…」
「晴矢の唇」
「な、なななななに!?」
「キス、してしまった、やはり駄目だな理性が保てない、」
風介は机からおりて、自分の荷物を持って、ぶつぶつ言いながら出口に歩いていった。俺は放心状態、ぱくぱく口を開いたり、閉じたりし「コイみたいだ」
「……あ?」
「コイみたいだ」
「鯉…、って喧嘩売ってんのか、魚顔って言いてぇのか、あぁ!?」
「違う違う、そのコイじゃなくて」
「は、」
「恋みたいだ、君に、君を見てると理性が保てない、駄目みたい、原因は君か…わかったよありがとう」
かつかつと風介が笑いながら廊下を歩く音だけが耳に入った。放心状態、二回目。解らない、なんだ、これは、なんだ?
口をぱくぱく
「恋みてぇ…」
あ、ブレザー…
返さなきゃ…なぁ