小さい悪魔だった。
「お前、魔界の者だな」
小さくて、綺麗な悪魔だった。
「名前は」
天界の花畑で、黒い物体が揺れた。どうやら花をつんでいるらしい。だが、この天界に黒い羽根を持った者なんていない。だとしたら魔界の民だ。何と言うことだ、私が倒さねば、魔界なんて天界に不釣り合いな者、私が。
見たところ小さい。十歳くらいの悪魔だ。私は十四歳。大丈夫だ、勝てる。
そう思って声をかけた。驚いた。彼はなんて美しい瞳をしているのだろう!花がひらひらと彼の周りを舞う。美しい。
「名前はなんという…」
『教えたら、どうなる』
「殺す」
『なら、言わねぇ』
「……」
声は思ったより低かった。だが、私はお前の名が知りたい。何と言う?私はお前の名前が呼びたいんだ。
悪魔は殺されるというのに、のんきに花をつんでいる。白い花ばかり。黒い彼には印象がつく。
「名を言え、…殺さないから」
『本当か?』
「ああ」
『…なら』
そんな時、目が覚めた。
ああ、私は眠っていたらしい。そして夢を見たらしい。彼は、デスタは小さくなりながら私の隣で寝ている。昔は美しかったのに、今になってみれば可愛いげが出て来た。
「デスタ」
呼びたくなった。彼の名を。昔聞いた彼の名を呼びたくなった。ぽつり、と呼んではまた呼び直す。デスタ、デスタ、デスタ。私は君の名が好きだ。なぁ、
「セイン」
「!」
「そんなに呼ばなくったって起きてるんだよ」
「すまない…」
むくりと起き上がったデスタを見て、ふうと溜息がもれる。それに気付いたデスタは口を開くもまた閉じる。
「昔も、お前はそうやって何回も俺の名前を呼んだよな」
「え…」
「俺がお前に名前を教えた時だ」
「そう…だな、覚えていたのか?」
「当たり前だろ」
お前は、俺の、特別なんだから、な?セイン
(ああ、嗚呼、私は君の名前が好きだ。でも君に名前で呼んでもらうのはもっと好きだ。デスタ、デスタ、もっと名前を呼んでくれ、君の声で、私の名前を呼んでくれ。嗚呼、)
「デスタ、」
「なんだ、セイン」
(なんて幸せなんだろう)
ユウリ様リクエストありがとうございました^^遅くなってしまってすみません…!甘い感じ、出せたでしょうか…?
気に入らない点がありましたら是非言って下さい書き直します…←