亜風炉照美の話
長編の番外編
「なぁお前、なんで髪の毛伸ばしてるんだよ?」
「え…?」
「お前、男だろ!」
「私、女だよ…」
私、女の子だよ
なんでみんな私を男の子って言うの?私は、男の子で…女の子。
小学六年生、父親に進められて柔道を始めた。それもお前は男なのに女っぽいからと、無理矢理に。
中学一年。髪を父親に無理矢理切られた。それで僕が大泣きしたら、流石に母親が不思議がって僕を病院に連れていった。
そこで解った真実
僕は男でも女の子になりたいとも思っている。完全な性同一性障害ではなく、初期の性障害。男という自覚はあるが女になりたいという願望もあった。
(僕は変なのかな)
(僕は、)
そのことがトラウマになって、僕は人と関われなくなった。
そんな時だった。金色の瞳が僕の前に現れたのは。
「お前、柔道部の亜風炉照美だろ?」
「…君は?」
僕に話し掛けて来たのは赤髪の二人だった。一人は両手に手袋をした少年、もう一人は少しぶかぶかなブレザーを来た金色の瞳の少年。その少年は僕を見るなりにこりと笑った。
「な、に…?」
「お前、柔道嫌いだな」
「え…?」
「…大丈夫か、俺の前でいいならさ、素直な自分でいていいんだぞ?」
「な、何言ってるの君」
「おれ、南雲晴矢な!こいつはヒロト」
「あの…」
「俺はお前、女でも綺麗だと思うけどなぁ」
「!」
にこり、とまた笑う彼は何なのだろう。まるで今まで僕のことを見て来たように、彼は僕の欲しがっていた言葉を与えてくれた。
「本当…?」
「なぁ、ヒロト!」
「うん、綺麗な髪だし」
「……」
それこそが、未来の僕の神とも言える、南雲晴矢との出会いだった。
君の瞳が好きだったから、僕は髪を金髪にしたんだよ