ぱたり。
目が開いたと思ったらそこは灯台でも、埠頭でもなく、真っ暗な鉄の壁に囲まれた部屋だった。

俺がキョロキョロしていると、バダップが自分の耳からインカムを取り、俺の耳に引っ掛ける。


「お、おい…」

「バダップ・スリード、応答が無くなった時はどうしたことかと…なんだそいつは」

「はい、バウゼン教官、過去に紛れ込んでいた未来の者です」

「なんだと?」

「どうやら我々以外にもこの装置を使う者がいる様子、参考人として連れ帰って来ましたが、記憶がありません、拉致されると消されるように仕組まれていたかと」


ぺらぺらとバダップの口から訳の解らない嘘が流れ出ていく。なんだ、未来って装置って、なんだ、何なんだ!

「お、おい俺は…!」


我慢が出来なくなって少し声を出して暴れたら、バダップがさも俺を抱き直すような仕種で唇を俺の耳元に一瞬近付けてこう言った。


“黙っていろ”


びくりと肩が動くのが自分でも分かった。今までのバダップはマイペースで温厚な性格だったのに、この暗い部屋に来た途端に冷たい目線と口調になった。心なしか掴んでいる手も強引でかなり痛い。


「……っ」


「どうしますかバウゼン教官、お調べになりますか」

「……それについてはヒビキ提督に話を通す、しばらくはバダップ、お前が観察しろ、記憶がないフリをしているだけかもしれん」

「牢には繋がないのですか」

「一般市民が政府の目を潜ってこの装置を持っていることは多々あることだ、それにこの場所を見られたからには唯で帰す訳にはいくまい…こちらにも表向きの顔があるのでね」

「はっ!それではバダップ・スリード、自室へ向かいます」


バダップは俺に見向きもしないで前にいるオッサンだけを見ていた。怖い、バダップが怖かった。きびきびとした無駄のない動き。

まるでそう、軍人。

そこには俺の知ってるバダップはいなかった。



あの声を思い出して

提供:リッタ







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