気付いたとき、私は魔界の入口に立っていた。デスタに会いたい、そのおかしな本能で来てしまったと思ったら、自然に溜息が出た。
私はあの時、魔界の力に飲み込まれていたと言っても、魔王側の人間ではなかった。円堂に負け、魔王が眠りについた時点で私達、天界の勝利は決まったのだ、そう、言えば私達は魔王を封印した側の者である。そのような者が今魔界を訪れたらどうなるか、私には予想がついている。
だがデスタは今でも助けを求めているのではないか、と思ってしまう。
そんな時、入口のあたりで何かがごそり、と動いた。気になって覗いてみると、そこには魔界の民の子供がいた。見た目的に女の子だ。
「何をしている?」
「きゃ!?」
出来るだけ優しい声で話しかけたが、少女は私を見た瞬間に怯えたように後ずさった。私は追いかけようとしたが、逃げるさいに足を引っ掛けて少女が派手に転んだので、急いで駆け寄った。
「大丈夫か!?」
「ひっ…天界の…民!何しに来たの、魔王様はもう眠りについたよ、何もできないから…」
「ま、待ってくれ…私は何もしない、ほら足から血が出ているじゃないか、見せてくれ」
「あ…」
少女の足を優しく掴んで血を拭いてやると、少女の目は直ぐにきらきらと光出した。どうやら誤解は解けたらしい。
「ありがとう…使徒さん」
「あ、ああ」
「使徒は皆酷い人って聞いたけど、貴方は優しい使徒さんなんだね!」
「……」
そんなことはない、出かかって止まる。魔界の民は皆使徒をそういう風に見ているのか。解る気がする。私達は魔王を封印した者、彼らから全てを奪ったも当然。
「使徒さん、どうしてここに?」
「え…ああ…、……、デスタに会いに来たんだ」
「デスタさんに?」
「…ああ」
少女はふぅん、と頷くと持っていたリンゴを服で拭き始めた。それから、あのね、と小さく呟いたので、少女の前にしゃがみ込んで目線を合わせる。
「デスタさん、最近元気がないの」
「魔王が…封印されてしまったから?」
「うん…、でも泣いてる人が居たら笑わせてくれるし、食べ物もくれる、だけど…」
「だけど?」
「デスタさん、最近魔王様のいる間によく行っててね、」
「!」
ああ、ああ
私はやはり、まさか
また
「泣いているみたいなの」
デスタは泣いてしまったんだ
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