到着!→面接!
「着いた…」
魔界を出てから歩いて数十分(瞬間移動すると心の準備ができないから歩いて来た)、とうとうヘブンズガーデンに着いてしまった。
着けば着いたで、どうやって入るか悩む。取り敢えずアラクネスの言う通りにセインに会わなければならないだろう。
その頃ヘブンズガーデン内。
「はぁあああ…」
「どうしたの、セイン」
「デスタに会いたい…ダークエンジェルまでやって…仲良くなれたと思ったのに、結局は逃げられてしまったし…もう少しで手が届いたのにぃい」
「五月蝿いわ」
ここはここで悩んでいた。天界の宮殿、の花畑に面した入口で、セインとギュエールはひなたぼっこ中である。
デスタ隠れ溺愛者セイン、天界のごく一部しか知らないことだが、その溺愛ぶりはもの凄いものであった。
普段顔に出さない分、ギャップは激しいのだ。
「はぁ…花畑にデスタが立っている幻覚が見える」
「嫌だわこの子、痛いわ」
「会いたい…会いたいデスタ…花に囲まれたデスタも可愛…」
「俺が何だって?」
………う、
「うわぁあ、幻覚が現実に!?」
「五月蝿いわ」
「テンションたけぇな」
ひょこり、と顔を出したデスタに予想も付かない速さで後ずさったセインは、何回もぱちぱちと瞬きをしては、目をこすった。
なんせ、妄想が現実になったのだから大変だ。
「こほ…っ、何故デスタがここに…?」
「ああ、そうだった…おいセイン」
「な、なんだ」
「俺、此処で働きたいんだけどよ、いいか?」
「!?」
働く?働くとはつまりデスタが天界に居て働くということで…つまり…私と一緒に居られる…え、誰が?デスタが…?夢にまで見たデスタが天界に……!?
「なななな」
「何故かしら?」
「おいっ、ギュエールっ!」
混乱中のセインに代わり、ギュエールは落ち着いた態度でデスタに話し掛けた。荷物をまとめていることから決心をしているのは分かるが、やはり魔界の民。油断は出来ないのであろう。
「魔王がいない魔界は不景気なんだ」
「えぇ」
「皆腹をすかしたりして、困ってんだ」
「えぇ」
「だから、出稼ぎにきた」
「貴方が?あの人に頭を下げたり、人の下に着くのを嫌う貴方が?」
「(アラクネスの言うこときかないと怖いんだよなぁ…)ああそうだ」
「…セイン、デスタは本気だわ」
「…ああ」
ふむ、と真剣に考え始めたセインは、何度かデスタを見て考え込んだ。悪さはしないか、何も企んでいないか、そのような質問に、デスタは全てイエスで答えた。そして、ちらり、とギュエールと目線を合わせると、判定が出たらしい。
「まぁ…いいだろう」
「本当か!」
「しかし!お前を本気で信じたわけではない、いちいち帰して、こちらの情報が流れるのも困る、スパイの可能性があるからな…よって、」
「よって?」
「デ、デスタは住み込みで働かせることにする…!」
セインこそ、真っ赤になりながらそう言ったが、ギュエールは笑顔で「よろしくね」とだけ囁いた。住み込み、とは天界に住むということか。出稼ぎに来たんだからそれくらいの覚悟はある。仕送りすればいいことだ。
まぁ、少し淋しいが。
「わかった、それなりの給料貰えるなら何でもいいぜ」
「本当にいいのか…?」
「ああ、だけど俺はどこで寝ればいい?まさか外で野宿か?」
「わ、私の部屋で寝たらどうだ!」
「あぁ?でもここなら沢山部屋あるだろ」
「かか監視も踏まえて、私の部屋だ!」
「ちっ…わかったよ」
内心、セインはガッツポーズの連続である。横でギュエールが冷ややかな目線を送っているが、もうセインにはどうでもよかった。
面接合格である。
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