魔界の不景気!
魔王がいない今、魔界は不景気真っ只中。最初は皆我慢していたが、日に日に窶れてくる者も増えて来た。主食が人間の魂な魔界の民の住むデモンズゲートは、火山に近い洞窟にある。そのため作物は作れない、家畜は飼えない、魔王が民に持ってくる食料が唯一の食事だったのだ。
「お腹減ったわぁ、デスタぁ」
「我慢しろよアラクネス…俺も死にそうなんだ」
「あーあっ、天界の奴らは今頃楽しく宴会とか…」
「あいつらの話はやめろぉ!くそっ…セインの奴め…」
「ごめんなさぁい(…そういえば、あのセインって子、ダークエンジェルのときも…いえ、いつもデスタを見てたわよねぇ…)」
「とにかく、この不景気なんとか乗り切るしか…」
「デスタ、貴方ちょっと天界行きなさいよ」
「はぁ!?」
アラクネスは爪を磨ぎながら軽い口調で呟いた。立ち上がったデスタは、わなわなと体を震わせ、今にもアラクネスに飛び掛かりそうである。
「なに言ってんだ!」
「ほら、魔界軍団Zのキャプテンでしょう、リーダーでしょう、出稼ぎくらいしなさいよ」
「だからってなんで天界」
「じゃあ、他に出稼ぎできて食料とお金もってそうな所言ってみなさいよ」
「………う」
決定ね、とアラクネスはデスタの荷造りを始めた。いかにも用意していた荷物に、デスタは泣きそうになる。
「はい、これ餞別ね」
「エプロン…」
デスタに手渡されたのは黄色のエプロン(胸元には平仮名で、だーくまたーと書いてある)だった。有り難く受け取ると、鼻がつん、としたことから、自分は行く前から軽く淋しさを感じているらしい。
「だけどよぉ、天界の奴が俺を中に入れるとは思えないんだが」
「大丈夫よぉ、セインに頼みなさい」
「セインなら尚更「大丈夫だって言ってんでしょ、早く出稼ぎ行って、こっちに仕送りしなさいよ」
「はい…」
その後、魔界の民総出で見送られた。
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