「アツヤが告白された」
「落ち着け、此処は男子校だ」
「違うよ、男にされたんだ」
「乙」
昨日の話だ。アツヤが悲しい顔をして帰って来て、どうしたの、と聞いたら泣き出して抱き着かれた(死ぬかと思った)
「アツヤ…?」
「兄ちゃんっ…どうしよ」
「落ち着いて、どうしたの」
「俺、男に告白された…っ三年の先輩」
「は…?」
「ベタベタ触られた気持ち悪い…うっ…」
「ア、アツヤ吐かないで、アッ―!!」
そこまで話すと士郎は軽く俯いた。風介はちらりと士郎を見て、はぁと大きな溜息、読んでいた本を閉じ、正面を向いて士郎と向き合う形になる。
「強制的な告白か?」
「うん…僕、どうしたら…アツヤ今日学校休んだし」
「入学そうそう災難だな、確かにお前に似て綺麗な顔立ちはしているから、気になってはいたんだ」
「うぅう…!」
「お前が泣いても先輩は爆発しないぞ」
士郎は完璧に落ち込んでいるが、逆に殺気を含めた涙をぽろぽろと零した。
「風介くん、アツヤ取られたくない」
「先輩の名前、解るか」
「…橋本さん」
「軽く喧嘩番長じゃないか、最悪だな」
「うぇえ…いやだあんなゴツイ奴にアツヤを渡したくなぃい!」
だんだんと机を叩いて、俯せになる士郎を見て風介は頭をフル回転させる。これは大変な亀裂が走った。入学して間もなくにアツヤに危機が迫る、アツヤに関してはウブで、尚且つ大人しい性格(理性は除く)の士郎では喧嘩番長橋本君には敵わないだろう。
「なぁ士郎、いっそアツヤに気持ちを伝えたらどうだ」
「無理、だよ…アツヤ、触られて気持ち悪いって、嫌だって言ってた」
「それは橋本君だからだろう?お前が抱き着いたときは平気だったじゃないか」
「でも…」
「とにかく、この件は私が入るべきではない、お前たちの問題だ」
「え、風介くん!」
風介は席を立つとすたすたと教室を出ようとした。士郎もそれを止めようと立ち上がるが、振り向いた風介の目を見てぴたりと体が固まってしまう。
「弟の態度の違いにも気付かないのは、お前くらいだ士郎」
「え…?」
それだけを言うと風介は教室を出た。