「あーあ、結局転んでおしまいだなんて、見に来て損した!」

「まぁまぁ照美、落ち着きなよ」

「基山くんは少し悔しがりなよ」

「はは」


グラウンドが見渡せる校舎の影に隠れ、照美と基山は体育祭を見守っていた。本当は晴矢と見に来る予定だったが、せっかくなので二人きりにしてあげようよ、という基山の提案に照美は渋々従った。

照美たちの学校は国立であるため、土曜に授業はなく、こうして体育祭に足を運んでいる。


「はは、じゃないでしょ、悔しくないの?あんなに派手に転ぶ奴に晴矢を取られて…」

「うーん、でも晴矢が選んだんだし…」

「…基山くんってさ、昔は晴矢と付き合ってたんでしょう?」

「うん、付き合ってたよ、フラれたけどね」

「今も晴矢は好き?」

「……うん、好きだよ、大切な親友としてね」


基山は少し切なそうな顔をして照美に笑いかけた。基山と南雲は昔付き合っていた。だが晴矢から突然別れを告げられ破局。この事実は照美に衝撃を与えたものでもある。


「恋愛としては見ていないの?」

「今はね」

「他に好きな人ができたとか?」

「……うん、まぁ」

「ふぅん、信じられないなぁ、晴矢以外にいい人見付けられるなんて」

「照美ったら」

「というか基山くん、そもそもどうして別れたの?」

「え」







ヒロト、ごめんな、俺もうお前とは付き合えない

でも、お前を嫌いになったわけじゃない、今でも好き、でも


 お前には、俺よりもっと合う奴が居るんだ。お前は、そいつと幸せにならなきゃいけないんだ。

俺の能力、フル活動して教えてやったんだからな

幸せにならなきゃいけないんだ、ヒロト、ごめんな、好きだった




「…基山くん?」

「え、ああ…まぁ、色々あってね」

「ふぅん」



まだ幼かった自分達の会話がフラッシュバックのように頭に蘇った。あの時晴矢が言った言葉。僕は理解してなかったけど、今なら解る。あれは晴矢の優しさ、僕も気付かなかった心を読み取った結果。

僕は、晴矢が言った通り、今晴矢以外の好きな人ができた。


「照美」

「ん?」

「帰ろうか、送るよ」

「ふふ、ありがとう。基山くんって、本当に律儀だよね」

「はは、そうかな」


綺麗な金髪の、貴方が。






僕の好きな人






 

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