「晴矢…」
頬には液体が伝う感覚があった。あ、俺切られたんだなって、涼野はいたって冷静な顔してるけど、心の中はぐちゃぐちゃだ。酷く動揺してる。
俺が一番救ってあげたい人。
(涼野…)
そんなときに俺を掴んでた奴が動いた。だらりと手が揺れて、意識を橋本に集中させる。こんな奴の記憶でも、俺は直ぐに分かってしまう、利き腕は右、ナイフを持ってるのも右、でも不慣れだ。
俺の手は自然に橋本の右手を掴んでいた。
「な!?」
「晴矢!?」
目線なんて合わないけど、ちらりと向いた先に涼野、直ぐ後ろにヒロトと照美がいた。
皆で俺を助けに来てくれたのか?
「橋本…だな、お前さ、前に涼野と戦って右手痛めてるだろ、へろへろな俺が掴んでも動かないもんな」
「ちっ…!」
「傷付けるのは結構だけどよ」
涼野を傷付けるのは、俺が許さないぜ
そう言って俺はナイフを傷付いていない頬に近付けた。