「ごめん」

「え…」


とん、と胸を押し返されて、晴矢は僕から静かに離れた。

「照美、お前の気持ちは嬉しいよ…でも、照美にはもっと良い人がいると思う」

「…どうして晴矢、やっぱり晴矢は風介くんがいいの?僕じゃダメなの?」

「…ダメってわけじゃない…でも、俺は照美とは付き合えない」


悲しそうに下を向いた晴矢はふるふると首を振っていた。僕は晴矢の肩を掴む手の力を抜いて、地面にだらんと垂らす。

少し前に、基山くんに晴矢のことを聞いたことがある。昔、基山くんも晴矢が好きで、そして晴矢も基山くんが好きな両想いの時期があったらしい。でも中学三年に上がった瞬間に晴矢から別れを告げられた。僕はその少し後に仲間になったから、そんなこと知らなかったけど、でもこれで僕たち二人の親友は晴矢にフラれたことになる。

あーあ、なんて恥ずかしいんだろう。どうして僕じゃダメなんだろう、なんで会って一週間もしない奴に晴矢を取られなきゃいけないんだろう。


「悔しいよ…凄く」

「照美、ごめ」

「…ごめん、晴矢…本当は家まで送ってあげたかったけど、ちょっと無理かも」

「……」

「ごめん…ね」

「ううん、大丈夫…一人で帰れるし…照美は…」

「はは…、少し頭冷やしとく」

「うん…」



小さくそう呟いた晴矢は、ちらちらと何回もこちらを振り返りながらも自分の家路へ戻って行った。


「……」


なんだかどんどんと悔しくなって、膝を抱えて顔を伏せた。

頭の中には晴矢しかいないのに、横から全て掻っ攫って行ったあいつが許せない。こんな醜い嫉妬心、芽生えたことなかったのに。

悲しくて悲しくて、それが逆に悔しさに変わって、苦しくなる。

ああ神様、貴方って本当にいるんですか?


「お前、確か」

「!」

「亜風炉…」

「涼野、風介…!」



いるなら何故こんな仕打ちを





 

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