“ち、違う、知り合いなんかじゃない!”



涼野が時間を潰すのに図書館を選ぶのは分かってた。だから早めに携帯で調べてたし、あえて涼野に合わせると言った。

図書館で時間を潰すなら楽だ。涼野に気を使わせないために涼野好みの分厚い本をチョイスして渡したら、直ぐに夢中になってくれたのが嬉しかった。

でも眠っちまった俺に怒らないで、お昼まで考えてくれたのは凄く嬉しかったし、何より

“晴矢”

もう一度名前を呼んでくれたのが、泣きそうなほど嬉しかった。

街中で心配してくれた、手を繋ごうとしてくれたけど、今日で終わる関係がこれ以上深くなるのが怖くて自分から身を引いた。それでも涼野は、風介は笑ってくれて、俺のこと考えててくれてた。


でも昔のクラスメイトが来たとき、涼野の心は大きく揺れてしまった。昔のトラウマが蘇って居るのが分かった。

俺が由紀さんみたいになるのが嫌だったんだ。分かってる。

涼野の気持ち、分かってるのに



「やっぱ辛ぇよ…風介…!」


気付いたら風介から逃げてて、自宅に近くなるにつれて涙が出て来た。手で目を擦っても、全然止まらなくて、走るのも止めて立ち止まる。


今日で終わる関係だったんだ。少し速まっただけじゃないか、俺から断ち切っただけじゃないか、風介は悪気があったんじゃないのに、やっぱり拒絶されるのは辛くて、悲しくなる。俺はとうとうしゃがみ込んだ。


「やっぱり、泣いてる」

「……照美」


前から声が聞こえた。
顔をあげてみると、きらきらとした金髪が見えた。それはいつも一緒にいる親友。

もちろん今日のことは知ってる。このデートは昨日ヒロトが企画したことだ。


“もう傷付かないでよ、晴矢…明日だ、明日で最後にしよう?風介くんは吹雪くんに任せて、もう止めよう、ね?”


俺が風介を諦めるという条件で、とヒロトはそう言った。当然照美もそのことを聞いているが、何故ここに居るのか。


「どうして…照美」

「南雲が、泣いてるような気がして…僕にも中途半端な女のカンがあるからね」

「……」

「ダメだったんだね」

「……っ」

「ねぇ南雲、僕じゃ駄目かな」

「は…?」

「僕じゃ、風介くんの代わりは勤まらない?」


ゆっくり歩いて俺の前にしゃがみ込んだ照美は、俺に目線を合わせて、頬を撫でるように触れられたかと思うと、真っ直ぐ俺の瞳を見る。


「僕は、晴矢のこと好きだよ」

「てるっ…」



晴矢は気付いてたんでしょう?

ぐい、と照美の腕に力が入ったのが分かった。その瞬間にすっと顔が近付いてきて、照美にキスされた。

何が起こったのか分からないまま、抱きしめられて、でも分からないけど、ぽっかり穴が開いた俺の胸が次第にあったかくなるのが分かる。


一目惚れなんて、ただの口実。この能力のせいで親に見捨てられた、誰からも気持ち悪がられた。

俺が欲しかったのはただ一つ。



「僕は…晴矢、君のためなら男になってみせる」





愛してほしかった




 

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