透視能力。
よくテレビの特番で未来が見える、貴方の人生を当てる、などの超能力者をテーマとした番組が多々見られる。
南雲晴矢という青年は、その能力が特化した存在であった。
一目見ただけで、相手はどんな相手なのか、どんな人生だったのかが解ってしまう。彼に備わった一目惚れ体質というのは、この能力から来ていた。
だが自分は超能力者だから、貴方の全てがわかります。だから大好きです。なんて言ったところで、信じてもらえる可能性なんて殆どゼロである。
だから南雲という青年は、あえてそのことを隠し、一目惚れという口実で相手に告白をしていた。(因みにストーカー体質は生れつきである)
「南雲、落ち込まないで」
「そうだよ晴矢…フラれるのなんて毎度でしょ」
「ちょ、基山くん言い過ぎ!」
南雲の親友の亜風炉照美、基山ヒロトは昔南雲の能力で救われた人物でもある。
亜風炉照美は、初期の性同一性障害に苦しむ一人の少年だった。父親に無理矢理柔道などという男らしい道を進められ苦しんでいたところを、南雲に救われたのだ。
“大丈夫か、俺の前なら、素直な自分でいていいんだぞ”
南雲の笑顔のおかげで自分は今此処にいる、と言うほどに照美は南雲を信頼している。
一方基山ヒロトは、南雲の幼なじみであり、重度の潔癖症である。昔から何かに触れることを拒み、友達を作れず虐められていた彼のことを能力を通し南雲が知り、自分たちの仲間に入れたのだ。
最初は何にも触れなかったが、時期に南雲にのみ触れるようになり、他の物にも手袋越し等で触れれるようになっている。
そんな二人に神様のように讃えられ南雲は高校生になったのだ。
「晴矢の能力を理解してくれれば、きっと風介くんも理解してくれるよ!」
「そうだよ南雲、言ってみなよ!」
「やだ」
だが南雲はこの能力を他人に見せたがらないという欠点を持っていた。幼少の頃に、この能力のせいで親に捨てられたのが今でもトラウマになっているのだ。(実際今はヒロトの家が経営する孤児院で暮らしている)
「晴矢…」
「風介、俺を殴ろうとした…それって、拒絶だろ?なぁ、そうだろ?」
「な、南雲!違う人を探そうよ!また良い人見付かるって!」
「やだぁ!俺は風介が好きなんだ…!風介の心を見た時から、救ってやりたいって…!ずっと頭の中が騒いでるんだ!」
「晴矢、」
「!」
また泣き出した南雲に目線を合わせるようにヒロトが屈んだ。それに驚いたように南雲が口を閉じる。
「風介くんには、あの白髪の友達がいるじゃないか」
「ふ、ぶき…」
「うん、吹雪くんっていうんだね?そう、彼がいるだろう、大丈夫だよ南雲、君が傷付いてまで風介くんを助けなくったって、彼がいる、ね?そうでしょう?」
「……うっ」
「だからお願い晴矢、」
もう傷付かないで