由紀が誘拐された。
それだけで風介はパニックになってしまった。中学三年のまだ幼稚な脳に警報が鳴る。あれは中学生の声ではなかった、おそらく高校生。


(由紀、由紀、由紀)


風介はがむしゃらに走った。呼び出された公園に、その身ひとつで走った。

ただ愛しい恋人のために。
























犯人は風介が倒した柔道のインターハイ選手だった。中学生に負けたことがきっかけで選手から外されたという。

それも悲しいことに一人ではない、三人だった。その真ん中の男の腕の中に由紀はいた。痛々しく殴られたあとがある、男の手にはナイフ、風介は目眩に苦しむ自分を何とか押さえ付ける。


「由紀は関係ない、離してくれ」

「ふざけんな!こっちはてめぇのせいで全部失ったんだぞ!?もうなんでもいい、警察に捕まろうがなんだっていい…お前に仕返しをしないと、俺はおさまんねぇんだぁ!」


風介はやっと気が付いた
自分がやったことは、由紀が喜んでくれることではあったが、相手はそれを憎く思っていたということを。

ぐったりとした由紀を見るたびに逃げ出したくなった。人質状態になった由紀が居ては自分は何も反撃出来ない、則ちこれから苦しむのは自分だ、怖い、怖いと体が震え始める。由紀は顔を合わせない。



「覚悟、出来てるよな風介くん」



風介は生まれて初めて恐怖を覚えた。





 

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