「風介くん」
「…なんだ」
南雲くんたちが行ってから、風介くんは一回も動かなかった。ただ黙って下を向いている。
僕が近付いて、顔を覗き込むと、悔しそうに顔をしかめているのが見えた。
「由紀、って誰なの」
「……」
「僕、偶然見ちゃったんだ、風介くんの待受画面…あれか由紀さんなんでしょ?」
「……見たのか」
「偶然だよ、ねぇ風介くん…僕じゃあ駄目なの?僕じゃ風介くんの過去、知ることもできないの?」
「士郎、違う」
「ずるいよ風介くんは!僕に何も言わないで悩んで、一人で背負っちゃうなんて!」
どうして、僕じゃ駄目なの!?
悔しいのは風介くんだけじゃない、僕だって悔しい、親友なのに、助けてもらうのはいつも僕。確かに頼りないかもしれない、でも、それでも
「頼ってよ、風介くん…」
「……」
僕は君の力になりたいんだ。モヤシだし、ひょろいけど、僕は君の力になりたいんだ、悔しいよ、僕だって君の為に何かをしたいのに
「僕たち、親友じゃないか」
そう言ったら、下ばかり見ていた風介くんが近くの塀にもたれ掛かって地面に座った。
僕も近くに行って、しゃがんでみる。
「私が、中学三年だった時」
「私には、栗尾根由紀という彼女がいた」
風介くんは、小さな声で話し出した。
真実のはじまり