「はぁ」

昨日、南雲晴矢は通算20回目の告白をした。だがそれはいつも通り断られたのだが、今までで一番傷付くものだった。


因みに南雲が通う学校は国立であり、日本で五本指に入るくらいの優秀な学校だった。南雲はその学校の特待生である。


「南雲、どうしたの?またフラれたのかい?」

「こら照美…言っちゃダメだろう?晴矢、どうしたの?またダメだったの?」

「ねぇ基山くん、矛盾って知ってる?」


南雲が落ち込むのはフラれた時、と言わんばかりに、俯せになっている南雲の周りに二人の生徒がやって来た。

一人は長く美しい金髪の少年、もう一人は赤髪に少し跳ねが入った短髪の少年だ。


「照美、ヒロト…」

「なぁに、昨日は新作ゲーム買いに行ったんでしょう?」

「照美とヒロトがどたキャンしたから一人でな」

「ごめーん、世界史の追試で」

「チャンスウか…あいつ追試好きだな」

「こら!チャンスウ“先生”をつけなよ!」

「で、ヒロトは?」

「あ…いや円堂先生に資料の片付け頼まれちゃって…」

「……いいさ、親友よりも好きな先生取るんだろ、お前ら」


ぷい、と顔を反らした南雲に二人の親友は冷汗をかきながら慌てて話題を変えようとする。それは今南雲が落ち込んでいる理由だ。

「で?どうしたの?」

「フラれた」

「また一目惚れ?前は女だったけど、今度は?」

「男」

「どんな?」

「髪も目もきらきらしてて、趣味が合って、背が高くて、声が綺麗で…」

「つまり、ドストライク」

「うん…」

「あぁー、もう!フラれたときの南雲は可愛いなぁ!」

口を尖らせた南雲に照美が抱き着くと、ヒロトはやれやれと両手を宙に浮かせた。

「で、ストーカー?」

「ストーカーじゃない、好きな奴を知りたいだけ」

「晴矢…君って奴は、俺の時も酷かったじゃない」


“俺の時も”、ヒロトという少年は過去に南雲の被害を受けたという口ぶりで南雲に話し掛けた。君の愛は重過ぎる、もう少し自重しようよ、と。

だが南雲は聞く耳持たず、ぱらぱらとノート(表紙にはマル秘と書いてある)を見るだけ。


「俺だって、酷くしたいわけじゃない」

「晴矢…」

「でも、今回の…いや、風介は」

「風介は?」

「多分、今までの奴らと違う」



ぱらり、と南雲がめくったノートの上に大きく書かれた“涼野風介”という名前。そして一番下に小さく書かれていたのは


「なぁ照美、お前確か柔道やってたよな」

「え?うん…取り敢えず黒帯だよ」

「だったらさ」



人喰い鹿って、知ってるか?




 

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