「えぇ!?告白されたぁ!?南雲くんに!?」
「うるさい」
某宗教男子校にも体育祭というものはある。この季節は、その体育祭に向けての練習が週に4回入ってくる特別編成の授業になるのだ。
その中でも、学校指定のジャージに鉢巻きをした士郎と風介は休憩がてらと木陰で休んでいる最中、風介が昨日の話を持ち出したのだ(因みにアツヤは長距離の練習で校外にいる)
「そ、それって南雲くんも僕と同じ」
「同性愛者だ」
「うわぁ、思わぬところで仲間を発見しちゃったよ…まぁ僕はアツヤ限定だけど。で?それから何か連絡は?」
「ありすぎて困る」
は?と頭を傾げる士郎の前に、ばっと風介が携帯を見せた。そこには着歴が入っており、どれも三分置き、そして全てが南雲晴矢と記入されている。
「これだけじゃない、自宅にも五分置き、ファックスまで来た」
「風介くん、自宅の番号も教えたの?」
「……教えてない、あいつが独自に調べたんだ」
「そ、それって」
「完璧なストーカーだよ、勇気を出して電話に出ても無言だしな」
うわぁ…と先程とは違う重たい声を士郎は吐き出した。南雲晴矢は一目惚れ体質であり、ストーカー体質でもあったのか、と考えた士郎は頭が痛くなる錯覚を覚えた。
「因みに今は?」
「常に電源を切っている」
「ああ、そう…」
「お前は知っているだろうが、私は三次元完全拒否、リア充は爆発すればいいと思っている」
「う、うん」
「そんな私がストーカー被害など、思ってもいなかったよ」
士郎は、はぁ、と溜息をついた風介の手元にある携帯に目を向けた。
昨日、偶然にも見てしまった風介の待受画面。人喰い鹿といい、この待受画面といい、風介は自分に隠していることが多過ぎると士郎は考える。
親友とは言っているが、自分はどれだけ風介を知っているのか。
まだ士郎は、待受画面のような風介の笑顔を見たことがない。