士郎と離れて数分たった。私と南雲は意外に家が近く、既に薄暗くなった道を話しながら歩く最中だ。
「なぁ、風介」
「なんだ」
「吹雪と風介って親友かなのか?」
「ああ、そうだ…まだ二年しか一緒にいないが、少し変な接点があってね、なんで?」
「いや…仲良さそうだったからさ…うん」
「…?」
その時の晴矢はきょろきょろと回りを見渡して、私と少し距離を置いているように見えた。それに視線は常に地面に向いてるし、心なしか頬が赤い(きっと電灯のせい、だと思う)
(…あれ)
何年も恋愛ゲームをしていると、その知恵が三次元でも役立つときがある。学校で通り過ぎた男女の雰囲気を見て、“あ、告白しそう”と感じた次の日にはその二人はカップルになっていた。
なんだか、今の雰囲気はあの男女に似ているなぁ
「風、介」
「ん?」
あれ、これはまさか
晴矢も士郎と同じ同性愛し
「初めて見た時から好きだった…、一目惚れです、付き合って下さい。もしも駄目なら好きになってくれるまで待つからさ…」
(“同性愛者”だ)
何故私の周りにはこんなにゲイが集まるんだ。私は三次元完全拒否なのに、何でこんなことに、一目惚れ?そんなの
“涼野くん、ごめんなさい”
そんなの、
“私、もう涼野くんと一緒にいられない”
ああ嫌な記憶が出て来た。私はポケットに突っ込んだ携帯電話をきつく握り絞めた。
「風介?やっぱり…気持ち悪い?」
「…ああ、気持ち悪いね」
「っ」
「私は、ゲイでもなんでもない、ただのオタクなんだよ、私と付き合いたい?違うよ、一目惚れなんて、ただの自己満足さ、また一目惚れしたら違うところに行くんだろう?薄っぺらい恋愛ごっこなら余所でやってくれ」
「違う!俺の一目惚れは薄っぺらくなんてない!」
「じゃあ、君は私の何を知っているの、一目惚れなんて顔だけだろう?ふざけるな、私はそんな」
“甘い男ではない”
どうしてもその一言がでなくて、私は口をつぐむと晴矢、いや南雲に背を向けて走り出した。アドレスなんて消してやろう、縁なんて切ってやろう。
私は三次元完全拒否。
恋愛なんて、二度としないと決めたんだ。
はじまった
後ろで南雲がなにかを叫んでいた。