少し昔のジャズが流れる喫茶店の窓際。外からもろに見えるこの席で、僕の親友と被害者の南雲くんは向き合うように座っていた。


「そう、そうなんだ!あのゲームのヒロインたちは実に個性豊か、美少女の表情にも使い回しが少ないのが魅力でね…因みに私のオススメは第二弾に出て来た貴君香苗ちゃんだ」

「いや、俺はあえて第一弾をそこでオススメする、貴君も良いが、あいつはツンデレというよりデレが多過ぎる、ふ、風介がツンデレが好きだというなら、やはり第一弾の波川綾乃で決まりだと思う」

「な、波川…!確かに彼女はこのゲームの売れ行きを一気に上げたキャラだと思われる…だが彼女のツンデレはツン7、デレ3の割合だ、私の好きな貴君はツン6に対して、デレ4、程よいツンデレは彼女しかいない」

「なら、ツンデレから話を変えよう、お嬢様キャラの諏訪寺九音は―…」「もう止めて!!」


そう、外からも丸見えなこの窓際の席で、この二人は恥ずかしがることなく、通常より大きい声で新発売のゲームについて熱く語っているのだ。風介くんは顔立ちが綺麗で、南雲くんもどちらかと言えば最近の雑誌に載っていそうな、所謂ジャニーズ系の顔立ち。この二人(いや勿論僕だって負けてないよ、アツヤに“兄ちゃんカッコイイ!”って言われたことあるし)に目を向けない女性は少ないと思われる中、そんなこと気にならないというようにこの二人はオタク丸出しな会話をしていた。


「なんだ士郎、部外者は黙っていろ、私は晴矢と話しているんだ」

「だからってね、人通りの多い喫茶店の窓際で、そんな話しないで!笑われてるよ僕ら」

「言わせておけよ吹雪、俺はもう慣れたしな」

「な、南雲くんまで…」


事の発展はこうだ
僕が新発売の大人気ゲームを風介くんと買いに行き、不本意ながら勝手な行動をとった僕が運悪く南雲くんの買ったゲームを壊してしまい、お詫びにこの喫茶店でお茶をご馳走することになった。

そのうち意気投合した二人は仲良くオタク話に花を咲かせましたとさ。

そのせいで僕はほったらかし。金額は僕が全負担なのをいいことに風介くんはぽんぽんと注文するし(というかなんで風介くん食べてるの)


「いや…こんなに話が合う人間に会ったのは久しぶりだ、晴矢が嫌でなかったら是非アドレスを知りたいんだが」


「え!?」

「あ、いきなりすまない…」

「いや、いいんだ…えっと…俺は良いんだが…本当に良いのか?ふ、ふうすけ…」

「?ああ、構わない。少し待ってくれ、確か携帯は鞄に…ああ、あったあった」


風介くんはストラップ一つついていない携帯を取り出すと、ピロリンという音と共に赤外線に乗せて自分のアドレスを南雲くんの携帯に送った。

(……あれ?)


その時僕は気付いたんだ。風介くんの携帯の待受画面、そういえば一度も見たことがなかった。どうせアニメのキャラだと思っていたのに、その画面に写っていたのは可愛らしい栗色の髪の少女と風介くんで、そこに写った風介があまりにも幸せそうな笑顔だったものだから、

僕は咄嗟に顔を反らしてしまったんだ。



だけと隣に座る風介くんは無表情に近すぎて
(僕は訳が解らなくなった)




 

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