初めて見た時から好きでした。一目惚れです、付き合って下さい。もしも駄目なら好きになってくれるまで待つから…
「やって来たな、池袋」
「そうじゃないでしょ風介くん…池袋に何の用?確かに近いけど、買い物なら近くの店で…」
「何を言う、オタクの聖地アニメイトは池袋にかぎるだろう」
「君、いつもゲーム此処で買うんだ…」
「何だその顔は、この前助けてやったのを忘れたか?大体あれは―…」
「分かった、分かった!付き合うから!」
「よろしい」
あの一件で、風介くんに借りができた僕は、風介くんの新作ゲームの買い物に付き合わされていた。(人気らしく、一人一個までらしいが、初回盤の特典フィギュアが欲しいから僕が呼ばれたらしい)
人喰い鹿
風介くんは巷ではそう呼ばれていたらしい。気になってあのあと調べてみたら、それなりに有名で驚いた。
道場やぶりの被害に遭ったのは50件を越えるとか、柔道の選手も倒しちゃっただとか。何が理由で辞めたのかは解らないけど。
「着いたぞ!ほら、予約は二人分してある、いくぞ」
「わかったよ…」
「はぁ」
案の定、人込みに押し潰されんばかりの勢いでアニメイトは込み合った。風介くんに「お前は外で待っていろ」と言われ、僕は外待機になったんだけれど。
「風介くん遅いな」
かれこれ1時間。
流石に遅すぎる。何か事件に巻き込まれたのではと心配が込み上げるけれど、あの人込みには入りたくない。
だが脳裏には助けを求める親友の幻ばかり見えて、とても辛くなってきた。
「よし、少し見てこよう」
今思えば、これが全ての始まりだった。
いらっしゃいハプニング