「なんだよ吹雪、ンなとこに呼び出して」

「橋本先輩、僕を使ってアツヤを脅したって本当ですか」

「はぁ?知らねぇよ」


案の定、橋本(もう先輩なんて付けてやらない)は学校にいた。クラスの中心で柄の悪い奴らと戯れている。僕が来たことに驚いていたが、にやりと笑うと一言、「アツヤは元気か」。流石の僕もブチ切れて、橋本を校舎裏に呼び出してしまい、文頭に至る。


「アツヤが脅えてました」

「……なに、アツヤから聞いたのかよ」

「いえ、悪く言えば立ち聞きですけど」

「はぁ?兄貴が弟のプライバシー侵害してんじゃねぇよ、このブラコン」

「……ブラコン?」


(ブラザーコンプレックスとは、男兄弟に対して強い愛着・執着を持つ状態を言う。俗に「ブラコン」とも略され、この場合、男兄弟に対して強い愛着・執着を持つ兄弟姉妹自体に対しても使われる。一般的にブラザーコンプレックスは「兄弟に対する恋愛的感情」や「自分のものにしたい独占欲」のある兄弟、と言う図式で捉えられる。ウィキペディア参照。)




「…そうですね、僕は俗に言うブラコンです、でも貴方はただの変態ですよ、橋本先輩」

「ンだと…」


アツヤは、僕を守る為に一人で泣いた。僕が弱くて奥手な初だったからだ、僕がもっと早く想いを告げていれば、今回の事件はもっと変わっていたかもしれない。ああ、無力だったんだ、だからこんなゲスがアツヤに近付く。まぁ、僕もゲスな変態なんだけど。


「アツヤは僕のものです、貴方みたいな、相手のことを考えない変態にアツヤは渡さない!」

「てめぇ…誰に向かって口きいてやがる…っ!」


「っ!?」


予想通りに橋本はキレて僕に殴りかかってきた。けど、僕はこれでもスポーツ推薦とか貰ってるんだけどね、嘗められたら困る。少しでも距離を置いて、こちらに向かって投げ出される拳の反対側に体を捻る。


「ちょこまかと…!」

「直ぐに暴力で捩伏せようとする!貴方は最低だ!」

「うるせぇ!!」

「…っ!?」


しまった。


腕ばかり見ていた目は下を死角にしてしまったらしい。腹にいい蹴りを一つ貰った。急に押し寄せる吐き気と圧迫感にその場に膝を着いてしまう。

それをいいように利用し、次は右にストレート。口に鉄臭さが広がって、意識が朦朧とする。


「オラ、どうした!?」

「…っ、ぐは…ぁ」

「急に大人しくなりやがってよ、あぁ?誰が変態だって、ブラコン兄貴」

「少なくとも…僕は、お前とは違う」

「何が違うって?変態だろーが!」

腹にもう一発、二発、体格からして負けていたけど、アツヤを守れるならいいと思った。でもとんだ勘違いだったみたいだ、アツヤが守ろうとしてくれた僕は、勝手な行動を取って早くもKO。


本当、ダメな兄貴。

僕って、





 

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