「せっ先輩!今日一緒に帰りませんか!」

「…パス」

「あっ……そ、うですか。すみませんでした…」

しょぼん。
私は今、誰がどう見てもそう表すような雰囲気を出しているに違いない。だって、あの一言を言うために、結構な勇気振り絞ったんだよ?それを「…パス」だけで済まされるとかなりへこむ。マリアナ海溝ぐらいへこむ。断られるんだったら最初から誘わなきゃよかった…。
ガックリと肩を落として落ち込んでいると、後ろから嫌な笑い声が聞こえてきた。

「…何じゃ、お前とうとうフラれたか」

「…仁王先輩。何か用ですか」

仁王先輩。テニス部のレギュラーでとても人気があるイケメンだ。放課後にたまたま出会って、たまたま気が合って、たまたま家が近かっただけなのに、私に妙なちょっかいばかりかけてくる不思議な人。一時期は宇宙人かとも疑っていた。

「別に?用ってほどのもんは無いぜよ。お前を見つけたら、ちょうど告白現場じゃっただけなり…フラれたけどな」

「告白なんかしてないしフラれてないですって!」

特に恋愛に関しては面倒臭いほど関わってくる。そんなに可笑しいか、私に恋愛事情がそんなに可笑しいのか。

「大体、仁王先輩には関係ないことなんですから…気にしないでくださいよ!」
「関係なくはない」

「関係なくないって…はあ?」

ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている仁王先輩に呆れた。
後輩の恋愛に口を出すわ、フラれたフラれたとマイナスのことばっかり言うわ…先輩としてどーなのよ!

「とにかく、早く告ってフラれんしゃい」

ほらまた…!
だんだんイライラが積もってきて、どうしようもなく仁王先輩にムカついた。声に出すなら、ふざけんなおるああああ!!って感じだ。もう言っちゃっていいかな?私ってば十分我慢したよね?いいよ、言おうよ、言っちゃおう!

「に、仁王先輩!」

「…何じゃ」

「あ…あの…!その…えっと…」

「何じゃ、早く言いんしゃい」

「えっ…と……」

あああああああ!!ダメだ!言葉がまとめられない!そりゃあ我慢してたことをぶちまけたいよ、ぶちまけたいんだけど言葉が見つからないしまとまらないから、ぶちまけようにも……くそう!

「にっ仁王先輩は!…えっと、その…!興味と…えと、好奇心だけで…、わっ…私に関わらないでください!迷惑です!」

「……興味と好奇心だけじゃとダメなんか」

「だ、ダメです」


仁王先輩は興ざめしたように、ふーん…と言うと、今度は私の目を見つめては、またニヤニヤと嫌な笑みを浮かべだした。

「それなら大丈夫じゃ。俺はお前さんのが好きじゃから関わりを求めとるんじゃ」

「…………え?」


「ということじゃ。俺はお前に関わり続けるなり」

「え、ちょ……!」

そんな言い逃げ…卑怯だって…!



(2011.07.01.)



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