夕焼けに染まって私の涙はオレンジ色だった。誰にでも淋しくなる瞬間ってあると思う。
私もこの瞬間がそうだ。
何をやっても上手くいかず、何をやっても中途半端。
できる自分がいるって分かってるのに。
何か言い訳をしないと気が済まない。そんなお年頃なのだ。

いわゆる中二病だ。



「……」


何で泣いてるんだろう。ふと考えてみると理由さえも分からない。
最近彼氏が出来た友達はもう帰ってしまっていて。
なぜかは知らないが、うちのクラスでは今カップルブームだ。誰かが告白をして、みんな付き合ってる。
そのせいで淋しいとかそんなんではないが。

ぽたりと落ちた涙を、人差し指で触れてみると暖かさが指に伝わった。
その瞬間にガラリと開いたドア。え、何でこんな時間……


「あー……入っちゃだめな雰囲気?」

「何で先輩いるんですか?」

「それこっちのセリフだし。俺部活」


「ここ先輩の教室じゃ、」

「まーまー。で?なに泣いてんだよい?」

「うざ」


勝手に私の前の席に座って。俺が聞いてやるぜ?なんて。ムカツク。



「先輩、」

「なに?」

「有名で知らない人はいないほどのテニス部、しかもレギュラー。
イケメンぞろいのその中で劣らないほどの顔。気さくな性格。オマケに甘い物好き?笑わせないでよ。
あんたみたいな奴が一番嫌い。
自分はモテますみたいな顔見せて。悩みなんか米粒ほども無いあんたに私の気持ちが分かる?ほっといてよ」


ノーブレス。大きく息を吸った瞬間に涙が落ちたことが分かった。
イライラして人に、しかもなにも関係ない先輩に当たるなんて最悪だ。
かばんを掴んで、扉に向かう。
閉じた扉を開こうと手をかけた時に、先輩が声を発した。



「悩みねぇとかこっちが笑わせんなよ」


「……え?」

振り返るともうすぐそこにまで先輩は近づいてきていて。思わず驚いて息をのんだ。


先輩は腕を伸ばし、私の後頭部を引き寄せた。

聞こえた鼓動が、なんだかすごく愛しかった。




恋風の胎動



「振り向いてくれない好きな奴にかなり悩んでんだけど?」

「え、ちょっ」
「俺のこと嫌いなら、まじでへこむ」
「……何言って」
「嫌いな奴に好きとか言われたら、やっぱりうざいかよい?」
「……そーでもない」
「よっしゃ!」


(2011.01.01.)



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