「あれ、アンタ風紀委員の人?」



教室の窓の点検をしていると、後ろから声をかけられた。

振り向くと入り口近くに立っていたのはここにいるはずのない人物。

2年生のこの人が、どうして1年の教室にいるのだろう?



「……なんでここにいるんですか?切原先輩」


「部活帰りに忘れ物取りに来たついで、こっちから行く方が早い……つかお前こそ一般生徒がいる時間じゃないだろ」


確かにもう日は落ちていて外は真っ暗だ。
普段はこの時間には帰宅部の私は家にいる。



「先生に頼まれごとをされて今までやっていたんです」


「……真面目な風紀委員はやっぱ違うのかもな、教師の言いなりになってそんな楽しいか?」

その物言いにカチンとくる。
決して楽しんでるわけでも、自ら媚を売ってるわけでもない。

「ただ言われたことをやっているだけです、いけませんか?……というより切原先輩そんな制服の着方でよく真田先輩に怒られませんね、」



腰パンにYシャツはズボンの外に出されてボタンは第3くらいまであいている。
ブレザーも着るというよりかけているに等しい状態。


真田先輩がここいいたら今すぐ怒号を響かせていることだろう。


「真田副部長より帰るの遅いし、バレやしねーよ。」


「直してください。」


「あったまかてーのな、中一なのに……この前までランドセルしょってたガキだろ?」


「ガキだろうとなんだろうと関係ないです、直してください。」



いかにもめんどくさいという感じで見てきた切原先輩がふと驚いた顔になって、そこからニヤリと笑う。

「……でも風紀委員がピアスはよくねーんじゃねーの?完全に校則違反だろそれ、ガキのくせに。」
確かに私の耳には飾りがあるけどコレはマグネットのイヤリングだ。
許可ももらっている。


「ピアスじゃなくてイヤリングです、穴はあけてないです……というよりガキガキいわないでください。」


「信用できねーなぁ?」


「ホラ!開いてないです」



そういってイヤリングを外すと先輩が見えないといってこっちにくる。


「どこだよ」


「ホラこっ………」



次の瞬間

私は切原先輩とキスをしていた。
しかも、ファーストキス。



唇が離されると思わず口を手で押さえてへなへなと座り込んでしまう。


「ほらな、まだまだガキだろ?風紀委員さん?」


得意げで意地悪な顔で笑った切原先輩はそのまま教室を出て行った。









彼が私に与えたのは


大人への階段だった。



(2011.02.09.)




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