先輩、好き。 私は、あなたが、 ―――大好きでした。 「……仁王先輩、どうして私のクラスにいるんですか」 「ん?別にいいじゃろ」 10cm以上差のある先輩が私の頭をなでる。 というより、ぐりぐりと押してくる。 「背が縮むから止めてくださいよ。」 嫌ではない。 逆に面白そうに笑う彼の笑顔が好きだった。 「あ、忘れるところだったぜよ。」 遊園地のチケット。 すごく楽しかった。 一緒に撮ったプリクラも残ってる。 夏は一緒にプールに行ったし、秋は紅葉を見に行ったし、冬は部屋で会うことが多かった。 楽しくて、幸せだった時間。 「愛しとうよ、」 「私もです。けど、恥ずかしいんで言わないでください。」 「可愛いのぅ、お前さんは」 幸せ、だったのに。 日が経つに連れ、先輩のファンからの言葉がキツくなった。 でも、隠してた。 この時間を壊されたくなかったから。 「……」 「仁王先輩、部活頑張ってください。」 「……いい加減、名前で呼びんしゃい」 「こ、今度にしてくださいよ。」 「顔真っ赤じゃな。」 「早く部活行ってください!」 大好き。 いつまでも、このまま一緒にいたかった。 先輩 が、中学を卒業して、高校に進学した昨日。 終わりを告げた。 「ごめんな」 「?どうしたんですか」 私の前に現れた彼は酷く静かで 悲しかった。 「別れよう。」 目の前が真っ白になった。 「好きじゃよ…… だけど、これ以上傷をつくって欲しくない。さよなら、じゃな」 なんで。泣きそうに笑うの。 そんな辛そうな顔するなら、言わなければいい。 私は、自分が傷つくよりも、 あなたと別れたくなかったんです。 先輩、 あなたが好きなんです。 虐められてたこと、言わなくてごめんなさい。 恥ずかしくて、言葉に出して言えなくてごめんなさい。 名前で、呼べなくてごめんなさい。 あなたは謝らなくていいの。 だから、お願い。 さよなら、と言った言葉を撤回して。 もう一度私の頭をなでて。 この、真っ白な背景で止まったままの私に もう一度 会って頂けませんか。 「雅治先輩、」 私の世界に色をください。 あなた 大好きです。 (2011.05.05.) 戻る |