「はぁ……」

花壇に並んで咲いた色とりどりの綺麗な花を見ながら大きなため息を1つ。

「ペチュニア、インパチェンス、ミニバラ。……この葉っぱは?」


これでも一応花の名前には詳しい方だと自分では思っているが、
葉っぱになるとそれは別物である。

「多分香りから推定すると……ミント系だよね、」

傍に誰もいないため自問自答であるが。


うーん、と唸りながら考えているとザクッという土を踏む音がすぐ傍でなった。



「……花、好きなのかい?」

「はい、大好きです!……え?」

勢いよく顔をあげると、そこにいたのは男子テニス部部長で有名な幸村先輩だった。

「えーっと?」

「あぁ、ごめんね。俺は3年の幸村精市。君は?」

「あ、2年の名無無子です。」

「名無さん……?何を唸ってたの?」


……聞かれていたのか。
ここには誰もいないと思っていたのに一生の不覚。

恥ずかしさを紛らわせながら
「この葉っぱ、ミントだと思うんですけど思い出せなくて」
と告げた。


「あぁこれ?これはペパーミントだね。」

ニッコリと愛想のいい笑顔で答えをくれた先輩。

「あ、分かりました!あのハーブーティーにしたりするやつですよね。」

「正解、いい子だね。」
そう言って頭を撫でる幸村先輩。
いい子の基準はよく分からないが幸村先輩に頭を撫でられるのは自然と嫌な気がしなかった。


「そういえば幸村先輩は何故ここに?」

「ふふっ、だってここは俺の育てた花壇だもの。そこで花を見て唸ってる子がいれば……ねぇ?」

「え!そうだったんですか!?」

周りを見渡すと花壇一面に敷き詰められた花はやはりとても綺麗で。
丁寧に手入れをしていることが伺えた。

「凄く綺麗にお手入れしてるんですね。驚いちゃいました。」

「ふふっ、ありがとう。でも名無さんもあんなに花の名前言えるなんて凄いね。」

「……それも聞いてたんですか、」

「まぁ元々知ってたけどね。」

「……それは、どういうこと何でしょうか?」

私は決して鈍感ではない。
だからといってあの幸村先輩が、こんなことを私に言っているとは到底信じられないのだ。

まだ疑っている。
ペテンなんじゃないかって。


「あれっ、言わなきゃ分からない?君のことを前から見てたってことだよ。つまり君のことが好きなんだ。」

……実際に言われるのは桁違いに恥ずかしい。
ペテンじゃなかったようだ。

「あのっ……、」

「あぁ返事は今度でいいよ。また来るから。じゃあね。」

「あ、」

笑顔で手を振り、肩に掛かったジャージを翻して幸村先輩は帰っていった。

「……何のドッキリですか…。」

実は私も前から幸村先輩のこと好きでした。
……これを先輩に告げるのはまた後日、かな。




ペパーミントの初恋



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