ほら、言って。好きだって。ねえねえ、早く早く。気怠そうな体を揺さぶれば抑揚のない声で「好き」と彼は言った。

なにそれ。

全然、響かない。私が無理矢理、言わせたみたいじゃないか。実際そうなのだけどね。否定はしません。もう、一回。ワンモアプリーズ。せっつけば、また無機質に「好き」と言う。漸く私が頬っぺたを膨らませている事に気付き彼は宥めるように頭を撫でた。女子はみんな頭を撫でておけば万事オッケーだと思ってるのか。怒るぞ。大好物だよ、バカ!んっと掌を見せれば手を繋いでくれる。

でも、違うよ。それじゃない。もっと、絡ませて。人差し指で彼の手の甲を叩いて意思表示。不思議そうに此方を見つめる双眸に愛しさを感じ、空いてる手で彼を引き寄せて触れるだけの口付けをした。

ぎしりと鳴るスプリングの音に、ああ、私は押し倒されているのかと再確認する。何だろう、この状況。色々すっ飛ばしている気がするけど私の気のせいなのかな。一室でお酒を飲んでいた。彼は未成年だったからジュースだけど。愚痴ばかりの話を飽きもせず聞いてくれることに気を良くしてかアルコールのお陰で饒舌になった私は偉そうに説教たれたのだ。口数が少ないのは分かる。だったら行動で示せ!男だろ!と。そしたら、こうなった。

いきなり、服を脱がそうとするものだから待ったを掛けて、始めに戻る。取り敢えず、曲がりなりにもお前アイドルだろ。女心分かれよ。ぎゅっとしてくれた拍子に私は「好き」と零した。「俺も」と言うから「それは狡い」と返す。なんて、チープなんだろうと思っていても耳元で囁かれるように言われたら突き放すなんて出来ないよ。なあなあな関係は嫌だ。

でも、でも、でも。

首筋を強く吸われ、唇の隙間から息が漏れた。ちゅっとリップ音が彼から発されるだけで、なんだかエロいぞ。蕩けるんじゃないかってほどの脳みそを働かして今後について思案する。
付き合うか付き合わないかは先の話で、まず自己紹介から始めようか。彼について知らないことがいっぱいだもの。だって、まだ私たちはお友達すらスタートしていないのだから。お友達のお友達はみんなお友達なんてふざけた話がある訳ないでしょ。順番は大事にしてよ。今夜は、うん。アルコールのせいにしてあげる。

ワンツーステップフライング

(お願い、誰にも秘密よ)
(今夜はノーカウント)
(恋のABCこれから始めるの)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -