とある日、ナギは珍しく仕事がオフだった。彼に呼ばれて部屋でまったりとしながら、ナギは雑誌はそして私はテレビを見ていた。ふと、隣に座るナギを見ると整った横顔が、食い入るように雑誌を見ていて、なんだか微笑ましかった。
「…なに、ボクの顔に何かついてる?」
「え、や、う…違うよ」
雑誌から顔をあげてじと目で私を見ながらじゃあなんなの、とナギは眉を寄せる。ただ見とれていただけなんだ。幼いながらに、可愛さと色気を持つ彼。近くにいてよくわかる、彼はアイドルになるべくして生まれてきたのだと。
「だーかーら、なに?」
「うぁ、ごめん」
意味わかんない、とナギはふいっと顔を背けて雑誌に視線を移す。仕事は大変だと思う、けれどナギは文句はいえど完璧にこなす。まぁ当たり前なのかもしれないけど、でも、まだ遊びたい盛りだろうに、色々な人に愛想を振り撒いて歌って踊る。ナギは、きらきらと光ってるんだ。
「きれい、」
「…え」
「わ、あ…ごめ」
「いいよ、触ってても」
ぶっきらぼうに言い放たれたけれど、許可をもらったのでナギのさらさらの綺麗な髪を指で梳く。なんていうか、手入れ方法を知りたい。女の私よりも髪が綺麗って、どうなの。
「髪触られるの嫌だって前言ってなかったっけ、」
「他人に触られるのは嫌。でも…仕方ないから名前は特別」
感謝してよね、と小生意気に言うナギの首に指を這わす。ナギはくすぐりに弱いのだ。やめてよ、と怒るけれど、可愛らしくて笑ってしまう。
「あ、ナギだ」
テレビにはにこにこと笑うナギが映っている。そういえばCMに出演って言ってたっけ。くるくると変わる表情に、なんだかこちらも楽しくなってくる。そんなCMだ。
「…きら、」
「ボクのCM見て綺羅?」
「違うよ、ナギがきらきらしてるなぁって」
「ボクが?」
「うん、ファンの子達に見せる笑顔、ナギっていう存在がきらきら輝いてて、宝石みたい」
「ちょ、なに突然…やめてよ」
「だって…」
「だってじゃないの。
もう……照れるじゃん、」
口を尖らせて、ほんのり頬が赤らんでいる。照れたナギも、可愛い。
「ていうか、きらきらって言うなら名前でしょ」
「え?」
「笑った顔、きらきらしてるじゃん。宝石とまでいかないケド」
さながら原石ってところじゃない?と言うナギ。
私の笑顔、ナギはそんな風に思ってくれていたんだ、嬉しい…な。
「ねぇナギ」
「なに?」
「ずっと、ずっと輝いててね」
「…当たり前じゃん
ボクを誰だと思ってるの?宇宙レベルでキュートな、HE★VENSの帝ナギだよ」
ナギの髪に触れるのをやめると、ナギは私の手をそっと握った。暖かい、私よりも大きな手。年下だけど、こんなにも大きいんだと、どきどきした。
「見ててよ、ボクを」
「うん、」
「宝石なんかより、輝くから」
「じゃあナギは、お星様だね」
でも、宝石は手を伸ばせば頑張れば届くけど、お星様は遠すぎて届かないなぁ、なんて考えていると、
「でもボクは、名前の近くにいるよ」
「ナギ」
「星は届かない、とか思ってたでしょ。ほんっとわかりやすいんだから」
くつくつと笑うナギに、敵わないなぁ、なんて思う。ほんと、敵わない。
「名前は、許してあげる」
「ん?」
「ボクの傍にいていいよ
名前は特別に許可してあげる
だから、離れるのは許さないよ?」
君はまるで宝石で、けれど宝石よりも光り輝くお星様。見上げれば、煌めく、優しい光。
「大好き、ナギ」
「っ、急に言わないでよ!」
「ふふ、だって言いたくて」
「ボクは、……ボクも、好き、だよ」
そう彼は、
ダイヤモンドスピカ
(いつも輝く、私だけの星)