「それからシンデレラは、おうじさまとけっこんしてなかよくくらしました」

「いいなぁシンデレラ。わたしにもいつかこんなすてきなおうじさまがあらわれるかなぁ」

「おまえにはむりだな」

「ちょっとえいいち!そんなはっきりいわないでよっ!!」

「ふつうにかんがえてありえないからな」

「ひどいっ!!おんなのこのゆめこわさないでよ!!」

「まぁ20さいすぎてもほんきでそんなことおもってたら、おれがなんとかしてやる」

「なんとかってどうするの?」

「………それは、そのときにな…」



〜♪〜〜〜♪〜〜〜♪


「こんにちは。綺ー羅君♪」

ドラマの主題歌の打ち合わせが終わり、事務所に帰って来たとき
偶然にも撮影終わりで事務所に寄ったHE★VENSを見つけ、私のお気に入りである綺羅君に後ろから抱きついた

「…………」

相変わらず無口な綺羅君
まぁそういうところが気に入ってるんだけどね

「あー!名前がまた綺羅に抱きついてるー!!」

私の方を指差して声をあげたナギ君
男の子だけど可愛いって詐欺だと思う

「んー?別にいいでしょ?ここ事務所だし、ナギ君に何か迷惑掛けてるわけじゃないんだから」

「名前、綺羅を離してやれ」

こいつは私の幼なじみ、瑛一
性格さえなんとかなればいいのに……と、もう何年思っていることか…

「えー。瑛一に言われることじゃないし。それに、綺羅君も嫌がってなさそうだし問題ないじゃん」

さっきより少し強く綺羅君に抱きつく
それでも振り払われるようなことはないし、嫌がられてないんだと思う
嫌そうな顔してないし

「…………」

っていうか、ほとんどしゃべんないんだよね……
まぁ、会った頃に比べれば大分しゃべってくれるようになったけど……

「……ねぇ綺羅君…。…綺羅君はこうされるの嫌?すぐ離して欲しい…?」

「………別に…平気だ……」

「そう?よかった」

許可が出たので、私はまだ綺羅君にくっついていた

「……っていうか、名前って本当に瑛一と同い年なの?」

「………正直、俺より下に見える…」

ここで突然なのだが、私は童顔だ
実際私は、瑛一と同じ23歳
でも大抵5歳位は下に見られる

「……あはは…よく言われるけど、ホントに23歳だよ」

「この前、冗談だろうがCMソングの打ち合わせの時に17と言って本気にされていたが、こいつは正真正銘23だ」

「ちょっ…!それは言っちゃダメっ!!」

ちょっとしたイタズラ心で言ったら本気にされて、あれはマジで焦った
だっていくら何でも無理があるから流石に気付かれると思ってたし……

「フッその顔……実にイイっ!!」

ゲシッ

「黙れ瑛一。イタイから」

瑛一のすねを蹴り、彼の暴走を止める
………ホント、これだけは何とかしてほしい……

「でも、間違えた方の気持ちも分かるよ」

「……君らから見て、私はいくつに見えるのよ……」

「19」

「…………17……」

「13」

「おいっ、若く見られて嬉しいが、そこまで若くないし!!っていうか、ナギ君。私君より10歳も上なんだよっ!?同い年にされるって……」

心外だ
その域まで行くと、若い通り越して幼いだ

「だって、名前は見てて幼く見えるんだもん」

「確かに、お前は昔からあまり変わらないな」

それはなに?
幼いまま変わってないって言いたいのかな?

「綺羅くーん。二人がいじめるよぉ……」

再び綺羅君に抱きついた
綺羅君は優しいから、こんな私の頭をなでてくれた

「……名前って、ホント綺羅のこと好きだよね」

「うん、好きだよ。だって綺羅君王子様みたいで格好いいもん。はぁぁ…私にも素敵な王子様が現れてくれないかなぁ」

昔読んだシンデレラ
召使いのようにこき使われていたシンデレラが王子様と幸せになる話

綺羅君は私にとってそんな童話の王子様のイメージにピッタリだ

「………もう行くぞ。次の仕事に遅れるからな…………。それと名前、今日の夜、開けておけ」

「別にいいけど、なに?」

「………それは、そのときにな………。行くぞ、綺羅、ナギ」

「はーい。じゃーね、名前」

「…………」

「頑張ってね〜」

私はこれから仕事と言った彼らを見送った

「そういえば、私はどうすればいいのかな?」

何も言われてないけど、まぁ連絡入るか


「瑛一、名前が綺羅とイチャイチャしててムカつくのは勝手だけど、男の嫉妬は見苦しいよ」

「……うるさいぞ」

「…………」


〜♪〜〜〜♪〜〜〜♪


「えっと…………、ここ…かな…?」

あの後、瑛一から送られてきた地図を頼りに行きついた場所は、まるで童話の中に出てきそうなパーティー会場だった

「…待っていたぞ、名前」

そこには、何故か正装をした瑛一がいた

「お待たせしました。っていうか、どうしたの?こんな時間に呼び出して」

今の時刻は午後11時30分
お掛けで童顔の私は補導されかけた
見た目若いってこういう時本当に面倒くさい

「とりあえずこれに着替えてこい」

「?分かった」

私は渡された紙袋を持って、着替えられる場所に行った


〜♪〜〜〜♪〜〜〜♪


「フッ似合っているぞ、名前。サイズも丁度よかったみたいだな」

「瑛一……これ……」

あの袋の中に入っていたのは、薄い水色のドレスだった
あんまり凝った作りじゃなかったから、着替えられるのに苦労はしなかったけど……
なんでドレス?
私なんかに着せても楽しくないと思うけど……

「………お手をどうぞ、プリンセス」

「えっ?あの……」

なんか、よく知っているはずの幼なじみの瑛一じゃないみたい……

「私と一曲、踊っていただけますか?」

「……えっと………お願いします……?」

よく分からないけど、私は差し伸べられた瑛一の手をとった
何処からか音楽が流れはじめ、それに合わせて瑛一と踊る
私は社交ダンスはからきしだから、瑛一がリードしてくれる

今、私の目の前にいるのは、私のよく知る瑛一のはずなのに、柄にもなくドキドキした
……今の瑛一は、王子様みたいで格好いい…
いつも、性格さえまともになれば……と思ってきたけど、これはこれで少し戸惑う……

「どうした名前?……今は俺を…俺だけ見ていろ……」

「っっ!!//////」

今、絶対私顔真っ赤だ
それにすっごい心臓の音が響く
こいつ性格はアレだけど、他はいいんだから…!
………こんなに近くにいるから、私の速い鼓動が瑛一にも聞こえちゃいそう……

ボーン

「!?」

「……シンデレラタイムもお終いの時間だな」

ってことは、今のは12時の鐘の音?
この辺で鳴るとこなんてあるんだ……

「……でも………」

グッ、と繋がれていた手を引かれ、私は瑛一の腕の中に飛び込んだ

「えっ瑛一っ!!?」

「俺は、ここでお前を逃がしてやる気はない」

もう曲は止まっていて、辺りを静寂が包み込む
私の耳に届くのは瑛一の言葉と、どんどん高鳴っていく自分の鼓動の音

「お前が拒んでも、俺は綺羅に譲るつもりはない。昔の約束、覚えているよな?」

「約束?」

瑛一と何か約束したっけ…?

「『20歳を過ぎても本気で王子様が現れるとか思っていたら、俺がなんとかしてやる』」

……あっ、そういえば昔そんなこと言われたかもしれない

「………まだ覚えてたんだ…」

私ですら忘れてたのに……
まぁでも未だに王子様が現れるとか信じてるんだけどね

「当然だ。まぁ本当にこの年になるまで信じているとは思わなかったがな」

「そんなの個人の自由でしょ?」

「…そうだな。だから………

俺がお前の王子様になるのも、俺の自由だ」

「!!!」

わざわざ耳元に、息を吹きかけるようにして言う

「まぁ、名前が俺のものになるのは、既に決まっていたことだがな」

………嘘だ
今までちょっとでもこいつにときめいたなんて嘘に決まってる
どんどん加速していくこの音も絶対嘘だ

きっと一時間も経てば忘れられる
こんな、……瑛一にときめいただなんてこと


25時のシンデレラシンドローム
(でも、25時の鐘が鳴ってもなお、このドキドキは消えなくて)
(むしろどんどん加速していく)
(きっとこれはもう……)

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