頭が、痛い。
ぎりぎりとこめかみを押さえ付けられたように頭が痛む。くそ、なんだこれ。

「……いい加減、認めろよ」
「っ……は、何、を、」
「わかってんだろうが、手前も」

俺の体を壁際に追いやるシズちゃんの顔が、凄く近い。ああ本当にやめてほしい。俺は今とても頭が痛いのだ。そっとしておいてほしい。

「いっつも肝心な所で逃げやがって」
「……逃げないと殴るじゃん、馬鹿じゃないの」

頭が痛くて仕方がなかった。イライラして、吐き捨てるようにそう言うとシズちゃんが俺の顔のすぐ横……壁を、がつりと殴った。コンクリート製のはずのそれは、発泡スチロールで出来ていたかのように簡単にひびが入り、破片がポロポロと崩れ落ちる。くそ、化物め。

「……俺が言いてえのはそういうことじゃねえ、って、わかってんだろ」
「……っ」
「いつまで、そうやって逃げるつもりだ」

シズちゃんの声はうるさい。キリキリ、ずきずき痛む頭に響いて反響して、不愉快極まりなかった。頭が痛む。おかしい。この痛みは尋常じゃない。くそ、まともに思考も働きやしない。

「手前は、いつまでそうしてる。目を背けて、逃げて、何になるっつうんだよ」
「……るさい、」
「そんな風に臆病風に吹かれて、逃げて、知らねぇフリして。そんなの、俺の知ってる折原臨也じゃねえ」
「……っさい……っ!!」

何が、何がわかるっていうんだ。馬鹿じゃないのかこの男は。頭が痛いんだ、君に時間を割く暇なんてないんだよ。もう、頭が割れそう。

「もう、だま、れ……っ」
「嫌だ」

ぐ、と両手を封じ込められる。頭が痛い、耳鳴り、が、。

「……、シズちゃん、に、何がわかるって言うんだよ……俺の、何を知ってるわけ?」

何も知らないくせに、と頭痛に耐えながらそう言うと、シズちゃんの目の色が変わる。あ、くそ、もうそれを見るだけで駄目だ、痛い、痛い。

「知ってる」
「……、は、?」
「手前のことくらい、わかるっつってんだよ」



だって、俺は、手前のことが、



シズちゃんの口が、ゆっくりと動く、やめろ、それ以上言うな、黙れ、くそ、頭が痛いんだ。だから、耳鳴りがして、何も聞こえないんだよ。変なんだ、こんなにも頭が痛くて、いたくて、泣きそうになる。

たのむ、から。



これ以上、俺を、おかしくしないで、







*――*――*

臨也は逃げるのが得意。

2010/5/27

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