ぴかぴかの金色がまぶしくて、思わず目をそらしたことを覚えている。見ていられなかった。まぶしすぎて、直視できなかったのだ。 その色はくすんだ灰色の俺の世界には似合わなくて、鮮やかすぎて、網膜に焼き付いて、離れなかった。 いつも一人で、たった一人で、まっすぐに立っているぴかぴかの金色。孤高の存在、王者。決して飼い慣らされることのない金色の獣。美しい、と、素直にそう思った。 「……で、どうして手前が池袋にいやがる」 「仕事だよ仕事」 だから見逃して欲しいんだけど。すぐ帰るからさぁ。 そう言った所で見逃してくれるような相手じゃないことももちろん知っているが、それでも口にせずにはいられなかった。案の定、目の前の男は青筋を立てている。 ――ああ、本当に、吐き気がする。 俺が見ていたのは、目の前の男だけだった。だが今は違う。この男の周囲に、様々な人たちが集うようになって、この男は、一人ではなくなった。 ぴかぴかの金色は一人でなくては美しくなくて、周囲の色に簡単に染まってしまう危うい存在だったのだ、もう、くすんでしまったのだ、この金色は。 「本当、ありえない」 「……ァあ゛?」 今のこいつは、サーカスで火の輪をくぐるそれだ。飼い慣らされて、牙を抜かれて、王者の品格をなくしてしまった獣。 「くすんじゃった」 「……手前、何が言いてぇ」 「……ライオンの話だよ」 一人きりで、たった一人きりでもまっすぐに立てる金ぴかに憧れていた。いや、違う。ただ、彼にそうあって欲しかったのだ。化物のような存在でいて欲しかった。孤立して、それでもまっすぐに立っていてほしかった。飼い慣らされて、牙を抜かれて、楽しそうに笑っていて欲しくなんか、なかったというのに。 ライオン (本当は、今の色が一番輝いて見えるだなんて、言えるはずもない) *――*――* 愛されるシズちゃんに嫉妬する臨也 2010/5/20 |