たったひとことが言えないまま友達を続けていたけれど友達だなんて思ったことがなかった
いざ言おうと思っても甘い甘い蜂蜜色した髪に吸い込まれてく
ああきみはなんてずるい
「ねぇ俺明日誕生日なんだあ」「え、ああ、そう」「ちょ、反応薄くない?おめでとうとかないの?」
あんたの誕生日なんか知ってるに決まってる
素直におめでとう、が言えるほどわたしが可愛くないことくらい仲沢も解ってるだろうに
二人きりの教室にはまだ暖房が付いていないため、わたしも仲沢もマフラーに首をすくめる
寒いね、そうだね、暖房早く付けたいね、軽く二、三言会話を交わしてからまた無意味な静けさ
日誌に書き記していた手を止めてわたしの前の席に座る仲沢をふと見上げると窓の下に広がるグランドを愛しそうに笑いながら見つめてた
綺麗な顔してる、わんこのくせに
「なぁに」「へ?」「顔が笑ってる、」「え、いやあ、わんこだなあ仲沢と思って」「わんこ言わないでってばあ!」
ぷう、と頬を膨らまして「お前なんか知らないもんねばか!」
何だお前可愛いな
「あぁもううざいな誕生日プレゼントあげるから機嫌直しなよ」「え、ほんと!」
キラキラ顔を輝かせてずぃ、と体を乗り出す仲沢
ちょ、ちかい!
「ああああげるから!離れろ!」「わぁいありがとー!だいすき!」「単純ばかめ」
けれどこれでプレゼントをあげる口実が出来た
だいすきでだいすきで仕方ないきみの生まれた日でさえ意地を張ってしまいそうだったわたしには丁度良い
「高いのはなしね」「全然高くないよー寧ろお金かからないから」「はあ?ちゅーはしないよ」「ちちちゅーなんか頼まない!」「あはは仲沢顔真っ赤」「もうー!」
あのね、いきなり真剣に光る綺麗な瞳に吸い込まれそうだ
ほんとにわたしこのひとのすべてによわい
「…これからのお前の時間を全部ちょうだい、」
それだけでいいや
ほんとにあなたはなんてずるい
火照る頬を隠すためにうつむきながら頷けば
「だいすき、」
優しいキスの雨と甘い言葉が降る
ぎゅう、と軋む音がする程抱き締められた腕のなかは暖かくて甘い匂いがした



蜂蜜色した髪が光にとける
ああなんていとしいんだろう


101107
グッバイブルーバードさまへ提出
利央誕生日おめでとう◎