「ユウジ。よーく聞けや。
 …葛城益子(かつらぎますこ)が、学校に戻ってきたで」

「――……っ」

「……気ぃつけや。
 やつはお前に――…えらい執着しとるみたい、やからな」

……マジ、かいや。
俺は呆然と立っていた。

葛城益子が帰ってきた――。
足が、今にもガクガクと震えそうだ。


『――…愛して』


「――ジ、ユウジ」

「……っ、は」

気がつけば、
白石が心配そうな顔をして俺の肩をゆすっていた。

…あかん。
まだ会ってもないんに、俺は――…こんな調子じゃ、やつの顔を見た瞬間どないなるか分からん。

「……言うとくけど、」

「………」

「花子だけは巻き込むな。
 ――お前と、葛城の問題に。」

そういうと、白石は部室のほうへ去っていく。
…花子。
お前が、俺の過去を知ったら――。

何を思うんやろうか。

葛城益子


「謙也、あざーす!」

「おん。別にええで!」

謙也に無事、
宿題をうつさせてもらい――。

やることもなく、ただみんなで部室でぼーっとしていると、
蔵が帰ってきた。

「あ。おかえり、黒石」

「誰が黒石やねん。むしろ黒曜石って言ってくれや。

「ごめん、話しが理解できない。

蔵が言ってる黒曜石って、
理科で習った石のことだよね。多分。


「…ってか、ユウジは?」

そうきくと、蔵が少し意地悪に微笑んで言った。


「気になるん?」

「ん?んー…まぁ、」

「……ふーん」

やばい。
話しが終わっちゃった…。

どうするよ!

謙也――!
そう思い、謙也のほうを見たが携帯でシューティングゲームしてる。

財前――!
アイポッド聴いて楽しんでるし。

かくたる上は、小春――!
って、パズル…?!部室で1000ピースのパズルしてんの…?!

…全く。みんな好き勝手してるなぁ。
って、あ。私も人のこと言えないか。

「…なぁ、花子」

「ん?」

「あんな。ユウジの、女性恐怖症の原因って知っとるん?」

そういうと、
小春がパズルから慌てたようにこちらに目を向けてきた。

「く…蔵リン!その話題は――」

「わかっとる。
 せやけど、これは――いつまでも、隠したままでおれん事態になったんや。」


一瞬にして、
部室が重苦しい空気にかわった。

…"女性恐怖症"。"ユウジ"。"原因"。
ワードが、私の頭の中で並び替えられていく。

…ユウジの女性恐怖症の原因、かぁ。

いずれ知れたらいいなあ――…とは思っていたけど、
もし知れるのなら…ユウジの口から、聞きたい。


「…私ね、そういうのは本人の口から聞きたいから待ってるつもり。」

「…………。」

「………花子、ちゃん」

「何があったかは知らないけど――ユウジが、
 私に話してくれる日がきたら、いいなあって思ってる」

そういうと、蔵が少し表情をくもらせた。
――何だか様子がおかしい。

…相当、やばいことなのだろうか。この話題は。



「……蔵?」

「ん。せやけど、
 あんま…ユウジに関わらんほうがええで。

 今は…な。」

「どういう、こと?」

そう聞き返したが、
その問いに返事が返ってくることはなかった。


――四天宝寺のみんなは、
知ってることなのかな。

そう思うと――…今更だが、
自分だけ疎外感を感じてしまった。


…ユウジ。まだ帰ってこないのかなぁ。





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