「――そうや、そろそろ練習試合いかなあかん…!」

――白石、
俺が練習試合行ってないことフォローしてくれとるんやろうか。

「…あ!練習試合!
 ご…ごめん、私のせいで――」

「ええよ、こんぐらい。
 …それより、花子が元気そうでよかったわ。」

そういうと、何故かは分からないが花子が嬉しそうに頬を赤く染めた。
――こいつ、まだ熱あるんちゃうか。

…何か心配やわ。本当。

謝罪


――結局、花子には
着替えさせたこともキスをして薬を飲ませたこともいえなかった。

「(…気付いとる、んかな。
 せやけど、聞くのも怖いしな…。)」

「着いたよ、立海」

「あ…おん。ほんまや」

――荷物をまとめて家をでてきた(鍵してないけど大丈夫なんかな…)はいいが、
…花子と丸井を合わせて大丈夫なんやろか。



「(うーん…まあ、何かあったら俺が助ければええんかな。)」

「あ、みんなまだ練習試合してるみたいだよ。
 ユウジもしてきなよ」

そういって、ニッコリと微笑む花子。

――何やろなぁ。
すっかり、花子慣れしてもうてるわ。

…こんなに女子に触ったのは、花子が初めてや。


ズキンッ。

『ユウジ君…私を、愛してくれないの?』

そんな声が聴こえた気がして、
思わず胸がズキンと痛んだ。


「……ユウジ?」

そういって、心配そうに俺の表情を伺ってくる花子。

「だ…大丈夫や。なんでもない」

――ダメや。
俺には…やっぱり、あの事件がずっとつきまとっとる。

この先も、ずっと――…俺を支配し続けるんやろうか。



『――愛して。私を、愛して――…』



.

..

...


「お、花子やー!花子、こっちこっちー!」

そういって、金ちゃんが大きく手を振っていた。
豹柄のタンクトップが凄い目立ってるよ、金ちゃん。

「なぁなぁ!」

「ん?」

「ユウジとお笑いの練習しとったらしーけど、
 ワイにも見せてーや!」

そういって、私のシャツを引っ張ってくる金ちゃん。
あかん。誰じゃい、そんな嘘ついたやつは…!

ギロッ。

――蔵を睨んでみたが、
あいつは俺じゃないで♪といった感じで口笛を吹いていた。

あの野郎…!

「蔵、後でちょっと覚えてろよ。

「っやー、花子は怖いなぁ。
 そんな物騒な顔して!」

この悪意がこもってるあたりが、許せないよね。


「……もういいです、はぁー」

「ため息ついてたら幸せが逃げてくっちゅー話しやで」

「いや、もう謙也と話した時点で私の幸せ逃げてったっちゅー話しや。」

頭殴ったろか。

「あはは。嘘嘘。」

――みんなとそんな会話をしながら、
私は熱があるから…といった理由でベンチに座らせてもらった。

…ダメだなあ。

昨日今日って、ろくにマネージャーの仕事してない。

「(こんなことでいいんだろうか…)」

真剣にそんなことを考えていると、
後ろから私の名前をよぶ声がした。


「……花子」

――ドキンッ。

振り返ることが、できない。



「……あ、あのな。
 その……本当に、悪かった。」

切羽づまったような言葉に、
私はクルリと後ろを振り返った。


「……勝手に怒って悪かった。
 あのな――その、」

「…………。」

「好きなんだよ。お前の…こと。」

「………え?」

「だから!俺は、
 花子のことが――好き、なんだよ」

そういうと、切ない表情をしてブン太が微笑んだ。





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