――私は、落ちたネックレスの破片を拾い集めた。

ポタ。ポタポタ。

ぎゅっと握り締めた拳の上に落ちる雫。
――泣いてちゃ、ダメだ。泣いてちゃ。


「………っ、っふ…っ」

誰かが迎えに来てくれる。
――ブン太が私のことを心配して戻ってきてくれることなんて、考えちゃダメだ。

私は真っ暗な視界の中、
ネックレスのハートの部品を手の平でぎゅっと握り締めた。

戻らないネックレス


「……っていっても、どこへいこう。」

今更ブン太の家へ戻れるわけがないし、
――だからといって、このまま公園にいるわけにもいかない。

…どこへ、行こう。


「……とりあえず、コンビニへ行こう。」

少なからず時間つぶしにはなるはずだ。
――私は携帯を取り出して、時間を見てみる。

…まだ8時。

コンビニへ行ったとしても、何回か場所を移動させていかなければいけない。
――あんまり長居していても、通報されそうだし。


ガラッ。

「いらっしゃいませー」

陽気な店員の声とともに、私はコンビニへ入った。
…っていっても、所持しているものは携帯のみ。

お財布なんてもってくる暇なんてなかった。

…はぁ、どうしよう。
本当困ったなぁ。


とりあえず、店内を見て回ろう。


えーっと…お菓子コーナー、ってブン太が喜びそうだなぁ。
…って、今一番思い浮かべたくない人の顔なのに。

「……馬鹿だなぁ、自分。」

そう呟きながら、私は雑誌の前に立ち、本を手にとって読み始めた。




.

..

...


ザーッ。

降りしきる雨の中、
俺は花子を捜し続ける。

「俺はこっちいくから、ユウジはそっち頼むわ!」

「おん!」

白石にそう頼まれて、別々のところを探すことにした。
――とはいえ、ここは神奈川。

見知らぬ土地に、見知らぬ人々。

…あかん、迷子にならんように気をつけんなん。



「……傘、ないと不便やな」

そんなことを呟きながら、
雨の中走り続けた。


――土砂降りにならんとけば、ええねんけど。


「……丸井は、何しとんねん。
 花子ほったらかして…。」

正直、昨日の夜丸井が何故怒り出して席を立ったか分からなかった。
…花子が家に戻ってこんかったのと、
何らかは関係あるんやろうけど。


「――……っ」

と、目の前の少女に俺は唖然としてしまった。


……あ、れは。


「……花子!」

「………っ、」

フラフラになりながら道端を歩いている花子の元へ駆け寄ると、
すぐさま抱きしめた。

…そういえば、昨日の夜からずっと雨降り続けてたんやよな。

…じゃあ、どれくらい花子は雨に打たれてたんやろ。
そう思うと、冷や汗が頬を伝った。


「……花子、しっかりしぃや…。」

「………だ、大丈夫…」

ぐしょぐしょに濡れた花子。
――これが大丈夫なわけないやろ。

「顔…赤いやん。」

「だい、じょ――…」

最後の言葉を言う前に、
花子は意識をなくした。

……大丈夫、なんて嘘つくなや。
ドアホ。


俺は花子を背中におぶると白石に電話をした。


「もしもし、俺やけど、花子発見したわ。
 ……おん。

 多分……こいつ、熱あるわ。」

ほてった頬を見て、俺はそう言った。



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