「……え、花子?
 髪は、どうしたん?」

そういって、目をまん丸にした謙也にそう問いかけられた。

「あはは。自分で切っちゃった。
 それと、ジャージとか演劇部の人に借りてきたの」

我ながら秘策だよね。

女の姿がダメなら、男装すればいいんじゃん…?

話したかった人


「あ…あのね……!
 って、何で倒れてるの――?!

ちょ、待て待て待て。
意味わかんないよ。

部室から出て、10分くらいして帰ってきたら、
バンダナの男の子が壁にもたれかかって倒れている。

――蔵は、なんだか物凄く怖い顔してるし、

雰囲気も明らかにダークなことになってるんだけど。



「――…っ!
 顔、腫れてるじゃん…!」

「……俺に、かまうなや」

「そんなわけにいかないよ!」

私はそういうと、
部室にあった白いタオルを適当に持ち出すと水で冷やしてすぐにバンダナの男の子の顔に当てた。

「――っ、何すんねん!」

「い…いいじゃん!
 この格好なら大丈夫でしょ…?!」

これでも、
さっき廊下を擦れ違った女子に『あの人かっこよくない?!』『やっばー、メアド聞きたい!』なんていわれてたからね!

自分では、完璧な男装だって思ってるから。



「……ユウ君。謝りや。それと、お礼もせぇへんなんやろ?」

「――せ、せやかて…!」

「ユウ君?」

そういって、眼鏡の坊主の子が
バンダナの男の子に凄い圧力かけてた。

っわー…めっちゃ怖い。

「……ゎ……った」

「…え?」

「せ、せやから、悪かったって…っ」

……そういって、
申し訳なさそうな顔で私の顔をちらっとみると下に視線を落とすバンダナの男の子。


ジーン。

って、別にこれといって悪いことされた覚えもないんだけどさ。


「…それと、ほんま…ありがと」

「………っ!」

「……男装、したのは何でなん?」

そういって、じっと目を見つめられる。
…ここは、正直に言うべきだよね。

「……あなたと、話したかった、から。」

「……え?」

「――…あなたと、ずっと話したかったから。
 でも…女が嫌いなら、
 私、男みたいな格好するから。

 それなら、喋れるでしょ――?」

そういうと、ビックリしたように目を見開いているバンダナの男の子。
…すると、切ない表情をして笑った。


「……俺の、ため…やったん。
 髪の毛…とか、もさ。

 ほんと…すまんこと、してもうた」


「………」

「…ほんと、すまん」

そういって、何度も謝られる。




「……あの、さ。」

「……ん?」

「……もう謝らなくていいから。
 自分で勝手にしたことだからさ――」

「せやけど…!」

「いいよ…もう、謝らなくて」

好きな人に謝られるのは、
正直辛い。

――そういえば、この人の笑顔…あの日以来、見たことなかったなあ。



「…ねぇ、友達に…なりたいの」

「……俺、と?」

「そう、君と。」


そういうと――。
バンダナの男の子は、辺りを少し見渡してから、
私に向き直って微笑んだ。


「…一氏、ユウジや。よろしくな」




 








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