「妬いてるだけやろ。」

そう白石に言われたときは、正直むかっとした。

「……っるせぇな。
 わりぃかよ」

「――けど、いつまでもこのままでええんか。
 好きなら好きって…言っとくべきやないんか?

 今とらんと、きっと花子はユウジに持ってかれるで」

そういうと、白石がどこか悲しげな表情をした。

――白石。
そうだよな。ふられたっていい。

…知ってほしい、俺の気持ちを。
少しでも、俺のことを考えてほしい。

「……分かった。俺、行ってくる」

「おう。ふられてこーい」

「うるせぃ!縁起の悪いこといってんじゃねぇよ!」

白石にそういって、俺は花子の元へと駆けた――。

キスはガムの味がした



「俺…こんなんだからさ。
 お前にやきもち焼いてた、ずっと。

 ――白石も一氏も、俺よりずっと魅力てきだし…。

 それに、俺が入る隙間なんてないって思った」

「………。」

「――本当悪かった。
 すっげぇ反省してる。

 ……けど、分かってほしい。

 俺の気持ちを」


そういって、ブン太がじっと私の顔を見ている。
――やばい。手汗やばい。

っていうか、

四天宝寺のみんながめっちゃガン見してんじゃん。

ゆ…ユウジもまさかここに…いたぁっぁああぁぁぁ!
めっちゃ私のほう見てるし。

い、いやだなぁ。この状況。


「……え、えっと…その…」

「――返事は、いい」

「え?」

気がつけば、至近距離にブン太の顔があって――。
唇に何か柔らかいものがあたっていて、
頭がよく動かなくて…。



「………ぶ、ん…太…」

「…っ返事はいつでも聞く。
 俺、待ってるぜぃ。

 ――ずっと、待ってる」

ブン太の気持ちが痛いほど伝わってきて、
何だか胸がギシギシといった。

「(…私の好きな人はユウジ。
 だからこそ、この気持ちに応えることなどできない)」

私が小さく笑うと――。
ブン太も、何かを悟ったように微笑んだ。


…ブン太を、傷つけてしまった。

それが、今の私には凄く痛かった。




ダダダダダダダダダダダダッ!


花子先輩に何してるんすか、ジャスタウェイキックゥゥ!

ドガッ!

「ぐは……っ!」

わけのわからない技名とともに、
どこからともなく赤也が全力ダッシュをして後ろからブン太を飛び蹴りしていた。

うっわぁ。

この光景、立海のときよく見たよなぁ。

懐かしや、懐かしや。


「いってぇ…何すんだよぃ?!」

「丸井先輩、今花子先輩に何してたんすか!
 俺は見たっすからね、
 2人がキ――「はい、赤也。落ち着こうね。

 ……りょうかーいっす」

どこからともなく幸村がニッコリと微笑んで、
赤也の首根っこを掴むとずるずると引きずりながら立海のベンチへと戻っていった。

…わー。

赤也のお世話役、本当疲れているだろうなぁ。

ってか、真田とかこっち見て
顔赤くしてわなわなと震えてるよ。

純粋すぎる、真田。


「田中!たるんどる!」

「……あはは」

とりあえず笑っておいた。
…これでも冷静を保っているが、
一番心が取り乱れているのは自分自身なのかもしれない。


――…ファースト、キス…だったんだけどなぁ。


なぞるようにして唇に指を当てた。
…最初は、
ユウジがよかった。


――なんて、わがままなのだろうか。

今更そんなことを言ったって、
過去は変えられないって知っているけれど。


――…ユウジがよかった。


そう、心の中で呟いた。



- 31 -


34
[*←] | [→#]


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -