「……何だよ、呼び出して」

白石に急に呼び出されたかと思えば、
人影のいないところへ連れてかれるし――。

俺、殴られるのかな。
まあ、殴られたほうがよっぽどいいんだろうけど。

「単刀直入に言うわ――。
 丸井君、花子のこと好きやろ。」

「…………。」

魔法使いの手


っぎゃぁぁっぁぁああああ!

うぉっ?!

私がベッドから飛び起きると、
隣でそれを見ていたユウジがイスから落ちて痛そうに腰をさすっていた。


「……あれ、ユウジじゃん。
 おはよう?」

「おはよー…って、何でやねん!」

そういって、ビシッとツッコミをいれられる。
――さっきの夢、凄く怖かったなぁ。

蔵の左手の包帯が外れた、思ったらその腕が…腐った色してて、それで私追いかけられる夢みたんだよね。
蔵怖いよ、蔵。

――そういえば、私、確かコンビニ巡りして、
それでも時間余って――夜中に公園のブランコで座りながら寝てたら、
いつの間にか雨降ってきてびしょ濡れになって。

…この際濡れてもいいや。

とか投げやりになって、
ネックレス握り締めて泣いてたんだっけ――。

そんなこんなで、気がつけば朝がきてて、
妙にふらふらくらくらして。

…それで、蔵の毒手の夢みたのか。

っていうか、私いつの間にこんなところで寝てるんだろ?
あれ?

「……私、なんでここに……?」

「………瀕死の状態を俺が見つけたんや。
 この、ドアホっ」

そういうと、ユウジにデコピンをかまされた。

バチンッ!

「いっだ!手加減なし…?!」

「……そんぐらい、俺は怒っとんねん。
 丸井と…何があったん。」

そういうと、ユウジがぷいっとそっぽを向いた。

――これって、
ちょっとは私のこと気にかけてる…って期待しちゃってもいいのだろうか。


「……喧嘩、した。」

「……何で?」

「…分から、ない。急に、怒って――…」

そういえば、ネックレスの破片!
私は思い出したかのように、ベッドから降りようとしたらすかさずにユウジに止められた。

「――そんな体でどこ行こうとしとんねん!」

「スカート!私の、スカート…どこ?」

って、今更気付いたんだけど――。
私の格好、上下男物になってる。

わ…ワッツ?What is this?

「――俺がとってくるから、待っとって」

そういうと、部屋を出て行くユウジ。
――これってもしかして…ユウジが、
着替えさせてくれた…っていうこと?!

「(っぎゃぁっぁぁあああ!ダイエットするべきだったあぁぁぁ!)

「…ただいま」

そういうと、ユウジが私にびちょびちょに濡れたスカートを渡してくれた。
――すかさずポケットに手をつっこんで、
ネックレスの部品を取り出す。

…っほ。
何か、全部ありそうな雰囲気だしよかった…。


「……前から思ってたんやけど、それ誰から貰ったん?」

「……これ、ブン太からの貰い物。
 四天宝寺行っても頑張れてきな感じで貰ったんだよね。」

…ブン太の形見として愛用していたが、
今はもう元に戻ることはない。

「………丸井が、ネックレス…ばらばらにしたん?」

「………。」

「………そっか。ちょっと貸してみ。」

そういうと――。
どこから取り出したのだろうか。

魔法使いのように、
裁縫道具を取り出すとちょいちょいとネックレスを針と糸で繋げていくユウジ。

……私は、ただその光景を見ていることしかできなくて。



「――ほら、元通りや。」

そういって、
ユウジが――笑顔で私にネックレスを元の形で戻してくれたことが嬉しくて、
ユウジが女嫌いだということも忘れて思わず抱きしめてしまった…。


っぎゅ。

「――…!花子?
 やっぱ…気にくわんだ?それなら、これ取り外すし――」

「う…ううん。嬉しくって……本当に、
 あり…あり、が、と……っ」

かすんでいく視界。
――涙でぼやけていく。

ダサいなあ自分。

でも…でも、元通りに戻ったネックレスが嬉しくって、
私は心からユウジに感謝をしたのだった――…。



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