――私は、あの日。

バンダナの王子様と出会った。

出会いは必然



「っひぃぃぃいい!!
 寝坊したーっ!」

そういって、がばっと起きると、
私は急いで練習試合へ行く準備をする。

――今日は、たくさんの中学校が集まってする合同練習試合なのに!

主催校は氷帝学園で、
他の県からもいろんな中学が集まってくるらしい。

…さて、立海のあの子たちは今頃胸をドキドキさせてるんだろうなぁ。

とか思いつつ、携帯をぱかっと開く。

……着信42件。
それも、全部幸村からなんだけど…!

あぁぁぁぁ、どうしよ!

とりあえず、最後の留守電聞いてみよう…!
そう思い、ぽちっとボタンを押す。


『……花子。
 遅れてくるなんていい度胸だね。楽しみに待ってるよ


……ゾクッ。
あ、やばい。

全身鳥肌立ちまくってる。


私はリュックの中にいろんなものをしきつめると、
家を飛び出した――。

急げ急げ…!

幸村様のお怒りじゃ…!

バタバタバタバタッ。



「あー、もう!何で階段があんのよ…!」

氷帝学園につくと、
長い階段を駆け上がる。

もう少し…!あと少しだ…!


ッガ!

「――…っ!」

後、ほんの数段…というところで、
私は見事に階段を踏み外してしまった。


後ろへ引っ張られるように、体が傾く。


あ…。
終わったな、自分。


と、目を瞑った時だった。



「――おっと!」
そんな声とともに、
私の体は何者かによって支えられていた。

――…目を、うっすら開けてみる。

わ…私、階段から落ちてない!
っていうか、この腕の人物は誰…?

上を向くと――。


「……大丈夫かいや。
 こんな階段から落ちてもうたら、

 怪我だけじゃすまへんかもしれんやん。」

そういって、緑色のバンダナをした少年がニッコリと微笑んだ――。

――きゅん。

え、きゅんってなんだ、きゅんって…!
は、恥ずかしい…!

「ご、ごめんなさい…!」

私はそういうと、慌ててその少年から一歩離れる。

っわー…学ラン姿だ。
かっこいい…。

髪の毛の外ハネ的な感じもいいし、
笑ったら物凄くキラキラしてるし…。


やばい。

この人の周りに、お花が見えます。

あー…かっこいい。
本当かっこいい。


「…じゃあ、次からは気ぃつけな」

「は…はい……。」

自分らしくない。
そんなの分かっている。

――…けど、何だろ。

乙女モード炸裂なんだけど。




私は、そういって去っていく少年の背中をじっと見つめていた。

…かっこよかったなあ。
誰なんだろう。
せめて、名前か中学校名くらい聞いとけばよかったなあー…。




「田中、たるんどる!寝坊とはなんたることだ!」

「うぅ、ごめんなさい…」

本当いい度胸してるよね。
 これから一週間俺の下僕だから。」

「……。っは?下僕?」

「口の利き方がなってないから、もう一週間追加。

そういって、ニッコリ微笑む幸村。
――まさに、極楽から地獄へ落ちた瞬間だった。

真田の説教を正座で2時間くらい聞かされたし、
二週間幸村の下僕(奴隷)だったし。


もう、二度と遅刻なんてしないでおこう、と心に誓った。





「――あ、ねぇ、ブン太」

「ん?なんだよ?」

「あの…さ。学ラン着てて、
 緑のバンダナの男の子って分かる?」

「……いや、青学の海堂とか山吹の壇とかぐらいしか
 でてこねぇけど。なんでだよ」

そういうブン太に、ことの事情を説明する。
――すると、少し唇を尖らせるこの子。

「……お前さ。一目ぼれなんて恋のうちに入んねぇだろぃ」

「は…入るわよ!じゃあ、貝は魚介類じゃないって言い切れる?

意味わかんねぇよ。

そんなこんなで、
私は結局バンダナの男の子を捜せずに――…立海から四天宝寺という中学へ転校することが決まってしまった。

親の都合。
仕方ない、って思っている。


けど…私の心の中は悲しみでいっぱいになった。



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