「先輩…本当、すみませんでした…」

そういって、しゅんっとした表情で何回も謝ってくる赤也に、
私は「いいから顔あげて!」という言葉を繰り返し何度も連呼した。

――その後、真田は赤也に「たるんどる!グラウンド100周!」って言ってたしね。
…ひぇぇ!真田相変わらず鬼!鬼だ!

…まぁそんなこんなで無事(ではないけど)一日目の合宿が終わり、
四天宝寺のみんなはバスで帰るところだった。

皆さんさよなら!

「って、お前何しとるん。はよ乗りや」

そういって、蔵が冷たい目で私を見てきた。
…なんだ、その目は。

人がゴミのように見えるってか。

「いや、私今日お泊りだもん。」

「……っは?どこに泊まるところがあるんすか?」

そういって、くりくりな目で私を見てくる財前。

「…いや、まぁ…アハハ。」

まさか、ブン太の家に泊まるなんていえるわけがない。
そんなこといったらこいつらが暴動起こすかもしれないからね。

乙女には一つや二つ、隠し事があっても許されるんだよ。


「――そのわざとらしいところからして、男の家やな。」

「ちが…!」

「花子ちゃんが男の家に――?!
 私は許さないわよ!そんなこと、絶対にー!」

「えちょ、ま「そうや。ここは平等にじゃんけんにしようや。

って、おいおい、一体なんのじゃんけんじゃーい!
話しがついていけていないのは、
私・師範・小石川くらいだった。
(あ、ユウジもかな…?)

「「「「じゃーんけーん!」」」」

丸井家に宿泊?!


「――というわけなんです。」

「へぇ。今すぐ帰れ。

そういって、明らかに顔を膨らませて怒っているブン太をなだめる私。
…あぁ、これもそれも全て白石とか黒石とか赤石のせいだ!

「残念やなぁ、丸井君。
 花子は俺と一夜を過ごしたいそうや。

「ちょ、やめてよ。
 蔵がいうと下ネタ的にしか聞こえないんですけど――!」

結局、あのじゃんけんは誰が私の付き添いをするかでのじゃんけんだった。
しかも、勝った人がついてくるならまだしも
負けた2人がついてくるってどうよ。

罰ゲームのいっかんじゃあるまいし…!

「……何で、俺ねん。」

「ユウジ、そないに機嫌悪くすんなや。
 ええやん、外泊!楽しいで!」

「………。」

明らかに嫌そうな顔をしているユウジ。

見事にじゃんけんで蔵と一緒に2人負けをした運の悪い少年。

――まあ、蔵はあれだが
ユウジと一緒に泊まれる…!って思っただけで胸がかなりときめいた。

一つ屋根の下、同じ空気を吸いながら同じ家の中で寝る…!
GJ!

っていっても、いくらなんでも
泊まる場所はブン太の家。

――ブン太が怒っても当たり前だよね。

事前に蔵とユウジまで泊まるだなんて誰が思うんだろう。
私も予想外の展開にびっくり。

…無理矢理ついてきたとはいえ、
女子1人と男子3人って危険じゃないのだろうか…。

少女マンガで言えば、
"何か起こってもおかしくない。"であるような気がするんだけど――。


「花子…もういい。
 別に…俺は、気にしてねぇから。スーパーいこうぜぃ」

そういって、ブン太が少し冷めたような目をしながら
私の手を握ってきた。

――あ、ブン太の手、汗かいてる。

…ラケットずっと握ってたもんなぁ。
相当疲れてるのかなぁ。


…今日は、腕によりをかけた料理を作ろう。

――それに、
蔵とユウジのことで少し怒らせちゃったし。

…ここは名誉挽回しなきゃな。




「あの、さ。今日何食べたい?」

そう聞くと、ブン太が振り返って微笑んだ。


「ん〜…ハンバーグ!」

「(…可愛いこと言うなぁ。)おっけ、分かったよ」

よし!頑張るぞ、私!


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