「ちょ、先輩何し――」

そう財前が言いかけた瞬間だった。

ドゴッ!

「「花子(先輩)…!」」

練習試合7


「ちょ、もっと優しくあつか…って、いだだだだだだだっ!
 優しくしろっていってるじゃんか…!」

「アホか!
 ゲーム中にコートに入るドアホはお前ぐらいや!」

そういって、さっきからガミガミと蔵にお説教されています。
あぁ、うぜぇ。

っていうか、私あの瞬間凄くかっこ悪かっただろーなー。



『花子!花子、大丈夫か!』

そういって、私の肩をゆさぶるユウジ。
――見事赤也のナックルサーブが頭にクリーンヒット。

い、痛い。
いくら頑丈といわれているとはいえ、
ナックルサーブは痛い。

っていうか、私生きてる!生きてるよ!

あの瞬間、本当一瞬だけお花畑が見えたような気がするもん…!


あぁ、生きてるって幸せだな。

「……まったく、
 ただでさえ脳みそないんに脳にダメージ与えてどないすんねん!

「ちょ、土下座しろ。今すぐ土下座しろ。」

そんなことを言い合いながらも、
頭部をグルグルと包帯で巻いてもらった。

お、なんか今の私のヘアー
ユウジヘアーに近いものになってるじゃん。

包帯がバンダナ代わりになってるしね!


…わーい!

ユウジとおそろいだ!

なんていって喜んでみる。



「……お前な、
 女が飛び込んでいくもんやないやろ。」

「けど、あの場で誰が財前を助けれたの?
 …財前にはこんなことで怪我してテニスできなくなってほしくないじゃんか。」

「……アホ。」

そういうと、蔵がぎゅっと抱きしめてきた。
…って、
何でこうなっちゃってんの…?!


「……心配したわ、アホ。」

「………っ、」

「ドアホ。花子なんかハゲろ。

「ハゲは師範だっつーの。」

そういうと、あははっと少なからず笑いがおこった。
…あー、それにしても二人っきりってきまずいなぁ。

っていうか、抱きしめられた衝撃で
私の胸がまだドキドキいっているんだけど…!

やばいやばい。


私のときめきの99%はユウジで出来ているのに…!
馬鹿野郎、私!




ガチャッ。


「………花子、大丈夫か――って、あ…」

そういって、
ユウジがきまずそうな顔をして扉のほうに立っていた。


「…あ、ユウジ。さっきはありがとね、蔵呼んでくれて」

「あ…おん。そんくらい、どってことないけど。
 …あんな、話しがあんねん。」

そういうユウジの顔つきはとても真剣で、
思わずかっこいいな…とか思ってしまった。

「(アホ、自分…。)」

「白石、花子借りてってもええ?」

ユウジがそういうと、
蔵が笑いながら私に「行ってこんか」といった。

…っていっても、
ユウジが話しがあるってどういうことなんだろう?

珍しいなぁ。

…まぁ、ここ最近
ユウジは私に慣れてきたようだしね。

酷い時は、声かけても無視して全力で逃げていったからね。

あれはいくら女が苦手って分かってても、
本当傷ついた。

今だから言えるけど。



「……っ、いくで。」

そういうと、
ユウジが私の腕を掴んでぐいっと引っ張る――。


「……あっ」

一度も私のほうを振り向かずに、
ズンズン前へと歩き続けるユウジ。

…あれ、どうしたんだろう。


もしかして――怒っている?

いや、まさか…ね?


私の心の中はいろんな思いでぐちゃぐちゃになりそうだ。
…一体どこいくの?
何で黙ったままなの?

何でこっちを見てくれないの?


「――…ユウジ、」

痺れをきらして彼の名前を呟いてみる。

辿りついたのは、立海の多目的教室…といったところだ。
この教室に入るのは懐かしいなぁ。

「…………なぁっ」

そういうと、ユウジがくるりと振り返って言った。



「……もう二度と、あんな無茶はすんなや。」




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