「あんな、どんなに強くても
 テニスが楽しいと思えんだらあかん。

 ――テニスは楽しんだもんが勝ちや!そうやろ!」

蔵がそういうと、
コートにいた全員が一致団結して「おー!」と声をあげた。

……そっか。

立海と四天宝寺の違いは、こんなところにあったんだ。

練習試合1


「――…ふぅ。いい朝だ。」

カーテンをあけ、
朝の日差しを受ける。

…合同練習試合。
立海・氷帝・青春学園・四天宝寺で、
なんと立海大附属中学校でやるそうだ…!
(開催校らしいから。)

っていうわけで、今日は1ヶ月も経ってないけど1ヶ月ぶりの母校にいってきます。
そしてメールを開いて顔をにやつかせた。


送信者:ブン太
件名:練習試合なんだけどよ
―――――――――
弟とか親とか俺んちその日いねぇから、
泊まってかね?
あ、夕ご飯は手作りがいいぜぃ!
―――――――――

というメールが昨日来た。
私は即『行くいく!泊まらせてほしい!料理も私が作るよ!』と乗って、
交渉成立――。

1日だけのお泊りだけど、
凄いわくわくする!

こりゃあ夜までブン太を寝かせられないね!
(性的な意味じゃないよ。)


「……よし、そろそろいくかな。」

私は旅行用のバッグを持って、
四天宝寺のジャージを着て出かけた――。

…そういえば、このジャージ。
よく考えればユウジのなんだよなぁ。

まるで私物のように着てるけど――…さっさと四天宝寺のジャージ買って、ユウジに返そう。

…っていっても、
何よりユウジのジャージですよ。

サイン入りでガチでほしい…!

なんてこと口が滑ってもいえない。



.


..


...



「あれ?金ちゃんいなくない?」

四天宝寺に一度集合して、
専用のバスに乗って移動――。

のはずが、肝心の遠山君がいないです。先生。

「あー、金ちゃんはええよ。ほうっといて」

「え…?でも――」

「あー、あいつは走ってくるらしいで」

そういって、眠たそうに目をこすっているオサムちゃん。
…っは?

大阪から神奈川までどのくらいの距離があるかあの子は知らないの?

「まあ、全員揃っとるんで出発お願いします」

そういって、蔵がバスの運転手さんに頭を下げた。
――えぇ、本当に金ちゃん置いていっていいのかよ…。

そう思ったが、これ以上つっこまないことにした。


「(あー、それより楽しみだなぁ。
 合同練習試合!)」

1人でるんるんと窓から景色を眺めていると、
隣に蔵がやって来た。


「(…っち。ユウジだったら抱きしめていたのに。)」

お前今の声にでとったで。

「すみませんでした。」

――内心残念だとか思ったけど、
隣に蔵が来てくれたことが嬉しかった。

…まぁ、
男子の隣に私からいくのは…さぁ?うん。

何かきまずいじゃんか。うん。


「……立海、ってええところやったん?」

「ん?聞きたい?」

そういって、蔵のほうを見ると――。
ぱちっと目があった。

至近距離でこれはやばい…何だか、やばい。


「…おん、聞かせてや。
 幸村君からちょこっと聞いとる程度やからな。」

その"ちょこっと"が何か全て聞き出したいところだが、
そこはあえて突っ込まないでおこう。






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