「なぁなぁー、ワイ腹減ったわー」

…なんだ、
このKY少年。手相にKY線絶対入ってるよ、この子。

「…金ちゃん。
 お前、空気よめや」

そうだそうだ…!もっと言ってやれ、蔵…!

おだやかな時間


まあ、無事ユウジと仲直り(?)できたしよかった。
っほ。

とりあえず、1人1人に自己紹介をしてもらった。
――私が今まで捜していたバンダナの男の子は、
ユウジ…っていう名前。
それで、でっかい大男が千歳君。
ジャッカルに似ている子が師範で、
超不良少年が財前。
可愛いけどKYな少年が金ちゃんで、
ユウジとラブラブなのが小春。

…あー、何とか1人1人の顔は覚えることができた。

……なんとか。


「…あ、あんな」

「……え?」

そういうと、ユウジが何かを言いたそうにして立っている。


「どうしたの…?」

「これ――!」

そういって、渡されたのは――。
…ジャージ?

全体的に黄色と緑が目立つジャージだった。

うわ、なんか濃いよ。



「貸したる」

「……いいの?」

「…おん。それと、肩パッドは入れんでええで。」

「え…。だけど、それじゃユウジが――」

「俺は、大丈夫や。
 男装なんてせんでええ。

 ――…それとな」

「……?」

そういうと――。
少しだんまりった後、ユウジが何かを決意したように私のほうに向き直って言った。

「――…俺、女性恐怖症克服しよーとおもっとんねん。」


……!
マジでか…?!

っていうか、
好きな人が女性恐怖症かぁ。

…どう接していけばいいか、よく分からないけど
ユウジが怖がらない程度に――私も接していこう。

いつかは、女の子らしくなった私とまともに話しができるように。


「せ…せやから、な。」

「……ん?」

「…お前に、協力してほしいねん。
 ――花子となら、克服できそうっていうか…」

そういって、頬を赤らめているユウジ。
…い、今聞きました?奥さん!

あ…あの、ユウジが…ユウジが…!

私のことを「花子」って…!

感動で涙でそうだし、
胸がきゅんきゅんしてる。

う…うわぁ…!
さっきまで地獄だったけど、今は私お花畑にいるよ…!


ゴンッ!

「あいだっ!」

誰かにグーで殴られた…!
誰だ?

そう思い、後ろを振り返る。


「にやにやしとんなや。
 気持ち悪い。

「き…気持ち悪いですって…?!
 ちょ、お前今すぐここで土下座しろ。

そういって、蔵とにらみ合う。
…何なんだよ、急に頭ぼこりやがって。

ユウジが目丸くしてんじゃん。


「――っはー、っていうか部活するで」

「よっしゃー!
 なぁなぁ、白石!ワイと勝負しよーや!」

嫌や。
 金ちゃんと勝負すっと本当めんどいねん。後が。

「なんでーや!勝負しよーや、勝負〜っ!」

そういって、蔵の腕を引っ張ってダダをこねる金ちゃん。
あ、可愛い。

今の金ちゃん凄くキュートなんだけど。


「……金ちゃん。
 あんましつこいと、これやで――?」

そういって――。
蔵が、口角をあげながら、包帯をするすると外しだした。

「――っひ!しょ、勝負はまた今度や、今度!」

「素直でよろしい。」

怯えたような金ちゃん。
――?

何をそんなに怯えているんだろう?


「…蔵の腕が、どうかしたの?」

「花子。聞いて驚くなや。
 白石の腕は――毒手やねん!」

そういって、ひぇぇっぇえっと声をだして震えだす金ちゃん。

え、話しついていけないと思ったのは私だけなんだろうか。


「…毒手?」

「せや!
 あの包帯がとかれたら…ずばーんってなって、ばばばばばってなってあわわわわなるんや!

「ちょ、とりあえず落ち着こうか、金ちゃん。
 っていうか、蔵は蔵で何にやけてんの?」

「ん?
 二人の会話がおもろいもん。」

「ふーん…?」


意味わかんない。
今の会話のどこに面白みがあったのか、10文字以内で答えてほしい。


「……花子」

そういって、トントン、と後ろで千歳君が私の肩を叩いてきた。

「ん?どうしたの?」

「あんな――」

そういって、コソコソと千歳君が金ちゃんに聞こえないようにそっと耳打ちした。

「あれ、嘘ばい。」

「……え?何が?」

「毒手いうのは、金ちゃん黙らせるための嘘たい。
 ばってん、金ちゃんには黙っとってほしいんよ」

「……あ、あぁー!そういうことね!
 分かったよ!」

なーるほど。
金ちゃんの性格上、暴走しまくってるから、
手に負えないっていう時に――毒手を思いついたわけね。

うーん…。

こんなんで騙されてる金ちゃんも金ちゃんで凄いなあ。



「ほな、行くで。
 あ――花子は残念やけどここで部室掃除な。

「――っは?って、ちょ…!
 言うだけ言って、いくな――…っ!

まあ、いいけどね。
ユウジと喋れるようになった今の私には、
この程度のことなんてお手のものさ。

っふ。


…よーし、掃除。掃除ね!


なんかやる気でてきたかも…!



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