――ガッ!
鈍い音とともに、壁へ飛ばされるユウジ。
「ちょ、蔵リン!暴力はダメやって!」
「せやかてな…!
こいつは、傷つけたんやで、花子をっ」
そういって、もう一発殴ろうと思ったが――。
ユウジが、視線を下に向けたままだったので、殴る気すらなくしてしまった。
「………。」
――正直、ユウジの女嫌いがここまで酷いとは思わんだ。
…少しでも克服できるように、
って幸村からの提案をのんでもうた俺も悪いんやけど。
『…花子を、マネージャーに…頼んだよ。白石。』
そういう、幸村君の切実な声が今だに耳に残っとる。
逃避
「な…なぁ。ユウ君。
これはいい機会やと思うで?」
「………。」
「――ユウ君の女嫌いをなくす、
チャンスやんか!ほら、ファイト、一氏!
これで彼女を――「いらへんわ、彼女なんて!」
そういって、きっとこちらを睨みつけてくるユウジ。
「お…女なんて、信用できへん。
俺は小春さえおればええって思っとる」
「……ユウ、君。」
「せやけど、
いつまでそんなこと言っとる気や?ユウジ。」
そういうと――。
視線を泳がせ、また下に俯いた。
はぁー…こいつの悪い癖発見や。
触れられたくないこととかの話題なったら、
下向くか視線そらすもんな。
「…女が怖い?
お前は逃げとるだけやろ。」
「――…っ、」
「逃げて逃げて…なんかあったら、
小春をつかっとるだけやろーが。
いい加減にせーよ?」
「――っ、うっさいわ!
白石になんでそないなこと言われんなあかんねん。
お前は俺のおかんか…!」
「なんやて――?!」
そういって、俺がユウジの首に掴みかかろうとした時だった――。
ガチャッ。
部室の扉が開く音。
それと、ゼェ、ゼェ、と乱れた息の音が聞こえてきた。
…誰やねん、こんな時に。
ゆっくりと、扉のほうを向く。
その光景に――その場に居た誰もが、目を疑った。
「……はぁ、はぁ…。
ただいま……っ!」
そういって、へらっと笑いながら――陽気な笑顔をこっちに向けたのは、
花子だった。
しかし――花子の格好は男装。
短く切られたショートカットの髪に、
上下ジャージ。
さらには、肩パッドまで入れられていた。