「俺は、忍足謙也や。
 謙也ってよんでくれてかまわんで」

そういって、なんだか
少しへたれった感じの男の子とも、友達になった。

…おぉ、2人友達(?)ができたぞ!

再会


「っじゃあ、ほないくか」

「あ、うん」

そういって、蔵と謙也に挟まれて部活へ向かう私。
――もうマネージャーの仕事かあ。

…っていうか、心なしか女子の視線が痛い。

あ、何か男子の視線も痛いかも。

っていうか、みんな見てるよ。

やだな、この雰囲気。「――」

急に蔵が私の腕を掴んだと思ったら、ぎゅっと抱きしめてきた。

ってちょ…!

「何す――」

んの、と言う気力すらなくなった。


――私がいた場所には、割れた卵がぐちゃぐちゃになってあった。

くるっと後ろを振り返ると、
慌てたような女子達がどこかへ駆けていく。


――もし、あのまま気がつかなかったら。
私、卵当てられてたんだろうなあ。
っていうか、誰だよ卵所持してるやつ。

「……卑怯なやつらやな。」

そういう、蔵の目は――。
さっきいた女子の方角を睨みつけていた。


「……ん。ありがとね、助けてくれて」

「……あぁ。」

「え?何で卵が割れとるん?」

――謙也。
お前、マジ帰れ。

そう思ったが、あえて口には出さなかった。


そうして、
歩くこと5分。

「ここが…男子テニス部」

何だか、和風な感じが漂う部室。
テニスコート。

…立海とはやっぱり違うんだなあ。
としみじみ思う。
『あ、花子先輩!ちぃーっす』

『お、花子じゃん。俺のTシャツ洗ってくれてさんきゅーなっ』

…そんな声が聞こえてくるような気がして、
少し心細くなった。


「……どしたん?」

そういって、私の顔を覗いている蔵。

「あ…ううん、何でもない」

そういうと、「そっか、ならええんやけど」と笑ってくれる。
…これから、私はここで生活するのかあ。

変なの。


ガチャッ。

部室を開けた瞬間に――。
部員と思われる人たちが、こっちをじっと見てきた。


「(ひぃぃ…!なんだこの人たち…!)」

1人はピアスした不良で、
1人は坊主で眼鏡の変わった雰囲気の人。
1人はジャッカルに似てて、
1人は豹柄のタンクトップを着てて。(あ、この子可愛い。)
1人は大柄で髪の毛もじゃってしてて、
1人は――。


「――…っ」

時が止まったように、私はそのある人物を見ていた。

…今まで、ずっと捜していた人。
恋じゃない、といわれ諦めつつも――やっぱり、私はこの人を、捜していた。

会いたくて、会えなくて。

名前さえ、知らないあなた。

――私のことを、覚えているかすらわからないあなた。




「………あ、あの!」

気がつけば、私はその人物の前に立って話しかけていた。



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