四天宝寺テニス部に<方言>禁止令



「今から、方言禁止にしよ!

そういうと、わいわいと賑わっていた部室がシーンと静まった。

「…先輩、頭大丈夫っすか?」

「え、財前何その目。
 いつだって私は真剣だよ!」

「……よし。
 みんな帰るで!

「って、白石何勝手に決めてんの…!
 ってか、謙也ー!何真剣に帰ろうとしてんだ、お前!
「白石が帰っていいっちゅーたもん。
 ええやん、帰って」

「何屁理屈いってるの!
 帰らない帰らない!」

そういって、私は部室の扉の前に立ち
部員が出て行こうとするのを防ぐ。

「ゲームやるまでみんな帰らせません!」

「「「「「えー!」」」」」

そういうと、部員達のブーイングが聞こえ始めた。
何だ何だ、お前達。

遊び心が分かっていない野郎ばっかりだな、ほんと。



「あ、今から方言喋った人グラウンド10周ね。

「っは、ふざけんなや――「謙也アウトー!いってらっしゃい!

そういうと、渋々グラウンドを走りにいく謙也。
我ながらナイスアイディア!
罰ゲームでグラウンド走るって、持久力もつくからいいかんじだね。


「まあ、私はこういう喋り方が得意だから絶対負けはしないわね。」

「オカマかいや。」

一氏今お前やろ言うたのぉぉおおおお?!
そういって、ユウジをコテンパンにやっつける小春。

――あ、小春今関西弁使った。

「小春、アウトー!」

「え?!花子ちゃん酷いわ!今のぐらい見逃してくれてもええんに…っ」

そういいながら、「謙也く〜ん♪」とかいって謙也のほうへ全力ダッシュする小春。
そしてそれから全力ダッシュで逃げる謙也。

あの子死にもの狂いで走ってるよ…。

まあ、浪速のスピードスターだから捕まる心配はなさそうだけどさ。



「あ、白石」

「ん?」

「1+1は?」

「2。」

正解。じゃあ、毒リンゴを食べたお姫様は?」

「白雪姫。」

正解。じゃあ、エクスタシーって言ってみてください」

「なんや、花子もききたかったんか!おれのエクスタシー!」

そういって、興奮しだす白石。
――案外ちょろいな、こいつ。

興奮したらすぐに関西弁喋っちゃったね。

「はい、白石アウト。いってらっしゃい」

「……はぁ、マジかいや。
 嫌やわあ…謙也、顔真っ青で逃げとるし」

そう愚痴愚痴文句をいいながらグラウンドへ走り出す白石。


「っきゃ、蔵リン発見!ロック★おん!」
っていう声が聞こえたような気がしたけど聞こえなかったことにします。


「あ、師範」

「……んん?」

「これ、どうぞ」

そういって、タオルを手渡すと師範が少し微笑みながらいった。

「おおきに。」

「……はい、師範アウト。

「……っぐぬ?!」

人を疑わないその志、本当に尊敬しています!
師範……!


「……っていうことで、
 残ったのはユウジ・財前・金ちゃん・千歳君だね。」

「こんなの楽勝ばい!」

シーンと静まる部室。

「……千歳、アウト。」

わざとか。わざとなのか、千歳君。
今の一瞬物凄く千歳君を抱きしめたかった。

無意識の熊本弁だったんだろうなぁ。

見なかったことにしてあげたかったけど、
そんなことしたら財前がどれだけネチネチ言ってくるかね。

「……残るところは後3人っすかぁ。」

「っていっても、財前はさほど関西弁じゃないから
 アウトになることってあんまないよね。」

「まあ、そうっすね。」

――あー、何か白石とかいないと
やっぱりなんか静かだなあ。部室。


「あ、白石や!
 白石ー!毒手使ったれー!

『アホかー!毒手使っとる暇なんてないわー!』

白石が全力ダッシュ。
その後ろを、小春が追いかけている。

…うわぁ、小春、

なぜかメイド服着て追いかけてるんだけど。



『蔵り〜ん!待ってぇ〜!』

「ちょ、何しとんねん小春!
 浮気か、死なすど!」

そういって、真剣に焦ったような表情をしたユウジがグラウンドへ走りに行った。
――うわぁ、めんどくさ。

なんだこの状況。


「待って待って!ワイもワイも!」

そういって、金ちゃんも走り去っていく。
――残ったのは、私と財前だけか。


「……先輩」

「ん?」

「……本当に、俺…いい先輩もてたっすわ」
何なんだ、財前。
いきなり真面目なこといいだして…。

これが本物の財前なのか。


「――何、どうしたの。財前」

「……いーえ。 
 別に何でもないっすわ。

 ……あ、小春先輩がこっち向かってくるっすよ。」


「ひーかーるーくーぅーん!」

って、俺――?!

焦った表情を浮かべた財前は、
そのまま部室をとびだして小春という魔の手から捕まらないように飛び出していった。

…見てるだけで楽しいなあ。
このメンツ。

最高の仲間に、
最高のお笑い。

なんかもう、そんな毎日が楽しくて楽しくてしょうがない。



「おーい、花子!お前もグラウンドこいや!」

「今いく!」

そういって、こっちに手をふっている白石の元へ

私は駆け出したのだった――…。






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